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ようこそ、【玄 亀 讐虎鐔 � 白 壺 鐔э 中 秀龍 鐔 殿 � 姫 蛭�� 】へ ③

ドクターCとマ・アが互いに合わさり、絵の具のように混ざり合い――その姿形を変えていく。 自分でそう感じておいて何もと妙な表現の仕方なのだろうとは思ったものの、他にピンとくる言い様がない。 やがて、かつてドクターCとマ・アだったモノは互いに混ざり合うスピードをあげて急激に人型から奇怪なる獣へと変化し終えた。 胴体は、白虎だが頭部はおそらく生前のダイイチキュウにて普通の男性として暮らしていたドクターCの顔。更に、尾の先はまるで風船のように丸く袋状に大きく膨らみ不気味な程に満面の笑みを浮かべるマ・アのあどけない顔がある。 つまり、胴体は白虎で頭と尾の先に人間の顔が存在するという、今まで感じたことのないくらいに不気味だとしか言い様のない不可解な獣が僕の行く手を阻むように立ち塞がったのだ。 【異界、、来、、人、、壺、、入 ……命、、従……銅鑼焼生娘、、】 「えっ………!?」 その奇怪なる獣は低い声で言うが、早口な上に何を言わんとしているのか分からず呆気にとられてしまった。 異変は、それだけではない。 前方に広がる暗闇からは、黒髪に桃色飾りをつけたお団子頭のコスプレによくある水色のチャイナ服を身に纏う女の子がしずしずと歩いてきたのだ。 そして、これまた不自然な程に満面の笑みを浮かべながら戸惑いと不安をあらわにしている僕の方へ近づいてくると、ふいに手に持っている何かを差し出してきた。 【给、 给(どうぞ、どうぞ)! 】 黒髪のお団子頭に、紅が塗られた頬っぺがチャーミングな少女が放った言葉の意味が分からないが、よくよく見れば彼女が何を差し出してきたのか理解した。 ダイイチキュウで馴染みのある、どら焼きだ。 頬に真っ赤な紅をぬりえくぼがチャーミングでふくよかな少女が何故それを僕へ差し出してきたのか尚更訳が分からない 。 けれども、こんなピンチといえる時にでも不思議なもので、お腹はすくものだ。「腹が減っては戦はできぬ」というものじゃないか――などと思いながらも僕は何の疑問も持たず、誘われるがままに手を伸ばして【どら焼き】を受け取る。 しかも、辺りに漂っている柔らかな甘い香りが僕の鼻を刺激して僅かながらの安堵感を与えてくれるからなのか《得たいの知れぬ存在から貰ったものなんて口にしてもいいのか》という、普通であればすぐに考えそうなことなんて僕の頭の中からは吹き飛んでしまっていた。 【異兄、異兄(異界から来た兄さん)…………謝謝(ありがとう)!!】 そう言うと、そのえくぼがチャーミングでお団子頭の少女は両手をぴったりと重ね合わせて、丁寧にお辞儀すると、そのまま身を翻して前方の闇に溶け込むかのように消えて行ってしまう。 闇から聞こえてくる甲高い少女の笑い声____。 何ともいえない胸騒ぎを覚えたものの、やはり猛烈な食欲には抗えずに僕は手に持っているどら焼きに釘付けとなる。 辺り一面が、白煙に包まれ――おそらく先程の白虎の化け物の大きな黒影や、その他にも得たいの知れぬ小さな黒影がいくつも僕を取り囲むように鎮座しているのがぼんやりとはいえ何となく見える。 しかしながら、不思議なことに今すぐにでも僕を襲ってくる気配は微塵も感じられない。 そもそも、僕を襲う気であれば先程の少女からどら焼きを受け取る隙に襲いかかってきた筈だ。 (じゃあ……何で__あの変な化け物達はここにいて……まるで僕らを見張っているように感じてしまうんだろうか……それに、みんな……はどこに行っちゃったの……っ……) 焦燥と悲しみが、ふっと襲いかかってくるものの、どら焼きのあまりの芳しい香りを嗅いだため僕の食欲が触発されてしまい不安感や焦燥感よりも勝ってしまった。 「ん……っ__美味しい……美味しい……っ……」 涙を流しながら、どら焼きを食す。 すると、その途端に白煙にまぎれた周りの影達がゆらゆらと揺らぎ、それと同時にまるで黒板を指で引っ掻いた時みたいに不快で耳障りな甲高い笑い声が辺りに響き渡る。 【食、、食……呪、、呪、、、与、、与__】 不快な笑い声に混じって白虎の化け物の――というよりはマ・アの可愛らしい声で何事か言ったのが聞こえてきたけれど、やはり何のことを言っているのか僕には分からずに夢中でどら焼きを頬張った。 しかし、その可愛らしいマ・アの声がどこからか聞こえてきた直後に、今度は僕の身にある異変が起きてしまう。 喉周辺が焼けるように熱く、尚且つ――いくら食べても、食べても飢えを感じる。 手に持つ【どら焼き】を確実に口にして空腹を満たそうとしているというのに、いつまでたっても飢えを感じるという得たいの知れぬ現象に襲われ、これまで幾多の世界を巡ってきて様々な敵と戦い壁を乗り換えてきた優太といえども全身にゾワゾワと鳥肌がたつ程の凄まじい恐怖を抱いてしまう。 (とにかく……水__水が……欲しい…っ……) その抗いがたい欲求は、今まで駆け巡ってきた【世界】では余り抱いたことのないものだ。 人間である以上、命を保つために最低限の水を望むことはあっても、今のように泣き叫びたくなるくらいに異様な飲み水に対しての欲求を抱くのは初めてだった。 【この狂った世界から出たい】___。 【仲間に会いたい】___。 【僕達の行く手を阻む敵を倒したい】___。 そのいずれもの欲求を、ゆうに越えそうな程に堪えがたい【飲み水がほしい】という僕の望みは、やがて肉体だけでなく精神をもじわりじわりと犯していく。爪をたて、がりがりと喉を掻きむしる。傷ついたせいで、血が流れてもお構い無しだ。 「み……ず――みず……っ___」 呼吸さえも怪しくなっていき、ぜいぜいと苦しみながら呻き始めたた時、僕の目にある物が映る。 壺だ___。 少し前まで、シリカが大事そうに抱えていた壺が氷のように冷たい地面にポツンと置かれていた。 チャポッ、チャポ…………。 肉体的にも精神的にも弱りきった僕の耳に、水音が聞こえてきた途端に、あることを思い出した。 そして、僕は虫のようにずり、ずりと這いつくばりながら無我夢中で壺の方へと近寄っていく。 (水……っ__あの……壺の中……には……水がたっぷり……入ってた……あれを飲めば……っ……) 震える手で壺の縁に口をつけると、何も考えずに欲望のままに中の透明な液体を飲む。 甘い濃厚な香りに鼻腔を刺激されつつ、弱りきっていた僕は徐々に意識を手放してゆく。 得たいの知れない【化け物たち】の下卑た笑みを耳にしながら――僕は微睡みの中で目を閉じるのだった。

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