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子猫が誘う部屋には何が待つのか②

「え……っ____!?」 予想すらしなかったハクビシンの行動を見て、僕も誠も互いに鳩が豆源をくらったかのような驚きの表情を浮かべつつ、間抜けな声をあげてしまった。 ハクビシンはその黒い毛で覆われた身を軽々とジャンプさせ、中央部分にある銀の龍の台座へと飛び込むと、そのまま二つの賽子を両足の五本指指で器用に掴み合げる。 その直後、辺り一面が白く目映い光に包まれて僕と誠は咄嗟に腕で顔を覆いながら目を瞑った。部屋一面に包まれる強烈な光が抑まるまでその状態で待機せざるを得なかったのだ。 やがて、目映い白い光は徐々に消えていき元の宮殿内にあるものにしては質素な部屋の状態へと戻っていく。 しかし____、 「う、うわぁぁ……っ……!?」 「ま、誠……っ____誠……僕の手に捕まって……早く……っ……」 水墨画が描かれている屏風から、強風が吹き――まるで掃除機のように誠の体を屏風の方へと吸い寄せてようとしてくるのだ。 姿の見えない何者かが、誠や僕を水墨画の屏風へと強引に近付けようとしているような気がしたから。 いや、正確には水墨画の屏風の世界へと強引に引き込もうとしているような気がして、吸い寄せられようとして必死に龍の台座を掴み僅かながらの抵抗している誠の体を離すまいとしがみつきながら、徐々に自分たちの体が水墨画の屏風へと近付きつつあるのを悟り危機を覚えてしまう。 不思議なことに、僕をここまで導いてくれた白い子猫と、この異常な状態を引き起こした元凶であるハクビシンは水墨画の屏風に吸い込まれようとはしてはいない。 白い子猫は半ば吸い込まれつつある僕の服の裾に噛みつき弱い力ながらも、水墨画にある方向とは逆の方の入口側へた向かって僕らを引き寄せようとして屏風に吸い寄せられるのを阻止しようと手伝ってくれていた。 だが、ハクビシンはそうではない____。 僕らが屏風の中に吸い寄せられそうになっていても白い子猫とは真逆の反応で何もしようとせずに龍の台座の側から離れようとしないのだ。 そして、器用な足の五本指で賽子を掴み合げていたままだったハクビシンが床に向かってそれらを放り投げると、再び辺りの光景に異変が訪れた。 水墨画の屏風の端にある白紙の部分に、【骰子已经掷出去了】と歪んだ筆文字が浮かびあがってきて、その直後――ハクビシンが僕らを水墨画の屏風へと吸い込ませまいとして必死で抵抗している子猫に向かって飛びかかった。 そのせいで、僕と誠は手助けしてくれていた子猫の力を失い――無力にも水墨画屏風の中へと掃除機に吸い込まれる塵のように飛ばされてしまうのだった。 体がぶつかる痛みすら、感じずに僕と誠は訳が分からないまま固く目を瞑り、互いの手を強く握り締めることしか出来ないのだった。

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