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ライムスが言う《変な生き物》と《おかしなもの》は何?①

「おい、優太も……それに引田も和気あいあいとしているムードを邪魔するのは気が引けるけど……ライムスの様子が何か変だ。もう一度、ライムスの声に耳を傾けてみたらどうだ?」 ライムスの異変に、いち早く気付いたのは誠だった。 確かに、特にこれといった特徴もない普通としか言い様のない剣を咥えた白い子猫は既にいなくなっているというのに未だに「変な生き物ガ……」とか「おもしろいものというのハ違うんデス!!」だのと要領を得ない言葉を言い続けていた。 しかし、ライムスの主人であり付き合いも長い引田は「またおかしなことを話してる」といわんばかりに呆れた顔でライムスを見ていたし、僕はといえば引田とのやり取りで申し訳ないと思いながらも、その内容があまり聞こえていなかったため反省しつつもカレの言葉に耳を再び傾けてみることにした。 「ち……違いマス……違うんデス!!マコトさんの言うとおり、ライムスにはまだ皆さんに伝えたいことガあるのデス!!変な生き物というのハ、あの白いフサフサのことじゃないののデス……ライムスが見つけてきた《おかしなもの》も……ユウタさんが受け取ったもののことじゃないのデス」 「えっ…………!?」 ライムスの意外な訴えを同時に耳にした僕達三人は、表情こそ多少違いはあれど、ほぼ同じ驚きの反応を示しつつ唖然としながらもキョロキョロと辺りを見渡してみる。 しかし、《白いフサフサ》と言った白い子猫の姿はもう既に辺りにはない。それだけでなく、未だにカレが口にする《変な生き物》と《おかしなもの》を示すナニかがある訳でもなく、周囲にはせいぜい建物を支えている赤く太い柱が四本立っているのと部屋の中央部分に鎮座している黄金の女性像があるだけだ。 両手を合わせ、紅を塗った口元に穏やかな笑みをたたえつつ真下から見上げる僕達の見下ろす形でそこに存在する黄金の女性像は初めて目にしたにも関わらず何故かどこか懐かしい気がした。 ふと、何の気なしに脇の方に目線を落とすとそこに黄金の女性像に関する簡単な説明が筆字で記されていることに気付いた。 しかし、僕らが理解できたのはその黄金の女性像が【昼子像】という名前だということだけだ。肝心の詳細についての説明の文字が所々虫食いの如く塗り潰され要領を得ないばかりなのと、最後の方の説明に至ってはほぼ真っ黒に塗り潰されているのだからそれも致し方ないと思わざる得ない。 ライムスは僕らが【昼子像】なるものに釘付けとなっている間でも黄金の女性像がある方とは正反対の方向を必死で示しながら訴えているのだ。 しかし、【昼子像】から離れてライムスが訴えかけている場所に注目し目を凝らしなが、何度見てみても僕らにはナニかが存在しているようには見えない。 「ねえ、ライムス……そこにいるのは、どんな生き物で……どんな物なの?」 もしかしたら、ライムスはうまく僕らに説明出来ないことに対してパニックに陥りつつあるのかもしれないということと、それと同時にこれ以上幾らライムスへ「見えない」と言っても埒があかない気がすると察した僕は少し具体的な表現で質問してみる。 すると____、 「えーと……さっきいた白いフサフサの変な生き物じゃなくてデスね……うーん、と……あっ……そうデス、このおかしなものみたいな……い、色……をしたフサフサなのデス!!」 しどろもどろに、しかし普段はどことなくとぼけ気味でマイペース極まりないライムスにしては大真面目な口調で説明しようとする。 【昼子像】なる巨大なものの真下で、何度もピョンピョンと跳ねながら訴えてくるライムス。 誠はライムスのことを信用していない訳ではなさそうだけれども、他のこと――おそらくは新たな部屋に足を踏み入れたせいで閉まっている扉から何とかして外に出られないかどうかが気になったらしく重厚そうな緑色の扉と格闘中だ。 しかも、主人である引田に至っては「ライムス、お前にとっては見るもの全てが《おかしなもの》か《変な生き物》なんだろ」と、まるで相手にしていないくらいにとぼけた相棒の言葉を聞いて呆れかえっていた。 けれど、どうしてもライムスの真剣な様子が気になった僕は再び【昼子像】なる女性の見た目を模した像を今度は先程よりも細かく観察してみるのだった。 もしかしたら、一度は見逃してしまった些細な発見があるかもしれない――と期待と願いを込めながら。

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