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久々の再会は思いがけない形で訪れる②

ピッ_,_,ピッピー!! どこからか、突如として聞き覚えのある笛の音が聞こえてきた。ただ、何となく音が外れているように聞こえたため、怪訝に思った僕は再び白いラインを越えるべく動かしかけていた片足をピタリと止めると、顔をそちらへと向けてみた。 すると、目線の先には木陰からヒョコッと此方へと顔を覗いている白猫がいた。 先程までは、いなかった筈だ。 それでも、僕は安堵を抱き暫く白猫の様子を見つめてみる。そうしたのは、以前に会ったことがある白猫だと察して安堵したためだ。 今、僕の視界に入っているのは、これまで襲われてきたピンチから救ってあげるといわんばかりに所々の場所で案内してくれた白猫だと分かったからこそ不安を抱くことが殆どなかった。 白猫は、そんな僕などお構い無しだといわんばかりに毛繕いしたり、そうかと思えば穴が開くほどにジーッと此方を見つめていたりと気紛れな様子だ。 けれど、ふと――白猫が此方から視線を逸らして青く澄み、雲ひとつない快晴の空を見上げたため、つられてしまい、自然に顔を上げて真上へと目線を動かしてみる。 すると__、 眩い光を放ち、ギラギラと照りつけていた橙色の太陽の表面には、まるで鏡が割れた時のようなギザギザ模様のヒビが入っていき、徐々にその割れ目から影が覆っていく。 そして、やがて全体が影に覆われて真っ黒になってしまう。 でも、不思議なことに太陽の円を取り囲む輪郭部分だけは揺らめく白光に包まれている。 そして、何よりも理解し難いのは、真っ黒な太陽(だったはずのもの)の中から、人型の黒い影が現れて僕の前に着地したことだ。 何も言わず、その黒い人型は戸惑い硬直し立ち尽くす僕の方へと歩み寄ってきて___ あろうことか、青白く光る矢を僕の体に向かって容赦なく放ってきたのだ。 あまりにも唐突で為すすべなく、予期せぬ攻撃をくらった僕は未だ尚も土の臭いのする地へと力なく倒れてしまうのだった。 * 「わ、わぁ………っ____!?」 全身から汗が吹き出し、なおかつ嫌な夢を見て怯える子供のような悲鳴をあげながら僕は目を開いた。 すると、僕がついさっきまで体験していた生々しい夢を見る前の《おもちゃの列車内》とは違う様子が広がっていることに気付いた。 まず、気付いた異変は温度だ。車中の室温が、凍てつく寒さから通常の室温へと戻っている。だからこそ、今――僕の額には汗が吹き出ているのだろう。 奇妙な夢を見る前に襲われていた眠気も、今は全くない。靄がかかっていた頭がクリアになっているおかげで、温度や眠気がないといった些細な異変よりも遥かに僕にとってひときわ重大な異変にもすぐに気付くことができた。 今まで行方不明だったサンが、眼前にいて――涼しい顔を崩さずに座席に座ったまま本を読み続ける《想太》へ向けてギリリと矢の先を引き絞っているのだ。 もしも、サンが手の力を抜いてしまえば、それは真っ先に本のページへと目を落として動揺さえもあらわにしてしない《想太》へと当たってしまうのは目に見えて分かりきっていた。 だからこそ、僕は無言のまま顔面蒼白となり首を左右へと降りつつ、先程から微動だにしないサンにすがり付く。 そんな僕を見下ろしてくるサンの顔付きは、とても険しい____。

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