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みんなを助けるためには彼処へ行かなくちゃ ②
「サン……何で___そんな姿に……っ……」
と、少し離れた場所で地に横たわる彼の元へ駆けつけて尋ねようとしたが、ふいに口をつぐむ。
僕が以前から思い描いていたエルフ像とは駆け離れ、予期せぬ容姿となったサンから目を離さずにはいられない。
もちろん、仲間である彼に対して、何という失礼な疑問を投げ掛けてしまったのだろうという罪悪感を抱きながらだ。
そして、ここにきて――ようやくサンがどうして先程からずっと体を小刻みに震わせながら眉間に皺を寄せ、僕と目を合わせないような様をとっていたのか理解した。
サンは、さっきからずっと怯えていたのだ。
まるで、ダイイチキュウの学校で過ごしていた時の僕と同じように自分という存在そのものに対して激しく劣等感を抱き、今も尚――怯えてるのだ。
明確にサンの口から、そう告げられたわけじゃない。
けれど、かつて自分に自信が持てずに周りのニンゲン達から向けられる目を気にしてばかりいた経験がある今の僕には、サンが必死で隠そうとしているその表情を見れば分かるのだ。
(サン……これが、キミの……本当の姿____)
「サン…………僕は責めたりしない。キミがどんな姿であろうと――僕も、それに引田も……キミを見下したりなんかしない。だから、お願い……そこから立ち上がってくれないかな?」
ほとんど迷うことなく、僕は地に伏したままの本来あるべき姿のサンへと声をかける。
「…………」
サンは無言を貫くが、それでも僅かにぴくりと頭が動き、僕の言葉に耳を傾けてくれたような気がしてホッと胸を撫で下ろす。
その直後、突如として――今まで辺りを支配していた静寂を引き裂く【僕だけ聞き覚えのある音】が凄まじい音量で鳴り響く。
まるで、この時を待っていたかのように____。
「サン……ごめん……っ……!!」
「な、何をっ…………」
ようやく声を発してくれたサンには申し訳ないが、とてもじゃないけれど時間がない。今すぐにでも次に繋がる行動を起こさなければ時間が無駄になってしまう。
このまま、ここにいてボーッとしているだけというのは、あまりにも有意義とはいえない。
どちらかというと、鈍感な方の僕にさえ――そう思わせてしまうくらいには突如として鳴り響いた音は途徹もない不気味さを抱いてしまった。更に悪いことに、その音はどんどんと歪んでいき不気味さを徐々に増していく。
かつて、ダイイチキュウで過ごしてきた子供の頃、あんなにも毎朝コロコロと柄変わるハンコをもらうために公園へと軽快な足取りで駆けていき、懸命に体と手足を動かしていた時にかかっていた軽快なリズムの音楽だというのに___今は、ただひたすらに得たいが知れなくて不快なものだ。
だからこそ、僕は精神的に脆くなり弱りきったサンを背中におぶりつつ《公園の出口》へと駆けて行く。
とにかく、この《公園》から一歩足を踏み出さなければ、お話にならないからだ。
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