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石像の異変

(天使の石像なのだから……その中身も石のはず____) 日頃から深く考えることをあまりせず、ダイイチキュウで学校に通っていた頃からも周りのクラスメイトから【単純な奴】だとか【頭も体もドンクサイ】と、からかわれていた僕は正直にいって《ミストの姉を模した天使像》の行動が何を意味するのか、そしてこれから何が起きようとしているのか――そういったことをすぐに思い付くことができなかった。 でも、側にいる三人____誠や引田、それにサンは違ったというのを、それからすぐに理解できた。 「あ……あれ____何……っ……!?」 多分、引田がその奇妙な存在を一番初めに認識したのだろう。 おそるおそる、震える指先をある方向へと向けている彼に気がつくことで、ようやく僕もその奇妙な存在を認識することとなった。 楕円形のそれは、まるでダイイチキュウにて幾度となく目にしていた卵に似ている。少なくとも、楕円形で白いその見た目は、そっくりだ。 しかしながら、ある点においてはダイイチキュウの食べ物である《卵》とは決定的に違っている。 ____規則的に鼓動している。 どくん、どくんと脈打ち揺れる度に、地面が大きく揺れて僕らの平衡感覚を狂わせていく。 足がふらつき、まともに立っていられなくなった僕らは周りの仲間の体と互いにしがみつくことによって何とか倒れ込むことは阻止できた。 ニンゲンである僕と誠、それに引田だけでなくエルフであるサンにも同じ状況が起きていることから、この現象についてだけは特にダイイチキュウから飛ばされてきたニンゲンを狙っている訳ではないことが伺える。 そして、そうこうしている内に再び地面にて鼓動を繰り返していた【卵型の心臓】の新たなる異変が起こってしまう。 先程までは、硝子のように無色透明だった【卵型の心臓】が鼓動のリズムに合わせて、表面の色を変え始めたのだ。 この現象に対してよく分かっておらず困惑しきっている僕らの目には表面だけが色を変え始めているように見えるが、もしかしたら――内部にも何らかの異変が起きているのかもしれない。 いずれにせよ、僕は迷ってしまった。 そして表面の色が、白から灰、灰色から橙、橙から濃青紫色――更には水色へと変化していく中で突如として、それは鼓動を止めた。 (何が起きたのだろう____) ____と、ようやく奇妙な存在である【それ】に気がついた僕を含めて、その場にいる仲間達に緊張が走る。 何故だか分からないけれど、とてつもなく嫌な予感がした。そのため、全員がほぼ一斉に鼓動を止めた【それ】へと目線を移した直後、天から真下へ向かって何かが落ちてきたことに気がつく。 「これ、想太……っ____ううん、僕の側からなくなった筈の……ベルのオーナメント?何で……今さら____ここに……っ……!?」 突如として存在がなくなっていた筈のベルのオーナメントは、ころころと地面を転がり、まるで意図的だといわんばかりに僕が立っている場所でちょうどよく動きを止める。 更に、少し遅れて聞こえてきた甲高い独特な音____。それに合わせるかのように、動きを止めた筈のベルの表面に誰かの目玉がぎょろりと浮かび上がってくる。 すぐには、誰の目玉か分からなかった。 両目ではなく、片目だったからかもしれない。 でも、それをじっと凝視している内に――ようやく誰の目玉なのか理解できた。 かつてのクラスメイト____【知花】の目玉が僕ら一行の様子を見つめ続けている。 他の仲間達がこれを【知花の目玉】だと気付いたかどうかは、僕には分からないけれど。

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