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第8話

しかし事態は急変する。 「ぐっ……! っはぁっ……はっ……」 身体が突然熱くなり、冬愛の額から流れる汗は止まる気配がない。 ここ最近、彼の周りでは信じがたいような事が起きていた。 それが冬愛にとっては大きなストレスになり発情期の周期が乱れてしまったのだろう。 再び起こる身体の変化。 高ぶる感情を抑えるために皺ができるほどシーツを強く握りしめるが、目の前が真っ白になってベッドの上から激しい音を立てて落ちてしまう。 「君っ、大丈夫!? ……ごめん。出てくるまで待つって言ったけど……入るね」 「来……るなっ!」 拒む冬愛の言葉を無視して、七海は緊急事態だからと言い寝室に入るとすぐさま彼の元へと駆けつける。 (やばい……匂いが) 部屋に充満しているであろう自分の香りで、すぐに彼も狂うに違いない。 襲われると思った冬愛は心の中で覚悟を決めると、静かに目を閉じた。 しかし、いつまで経っても想像していた痛みや苦しみがやってこない。 恐る恐る片目を開くと、心配そうに自分の顔を覗き込む七海の姿が見えた。 「お……まえは、俺を襲……ったりしないの……?」 「……あっ、そうか。まだ話してなかったね。俺はβの人間だから、あまり匂いとか感じないんだ。やっぱりこの症状……発情期なのかな?」 彼の言葉を聞きホッとした冬愛は、問いかけに対し首を縦に振って答える。 「えーっと、こういう時は……抑制剤が必要なんだっけ?」 「いま、持ってな……い」 「分かった。少しだけ1人で待っていられる? 多分、1時間もあれば戻ってこれると思うんだけど」 「この部屋……から……はぁっ……出なければ……平気だ……と思う」 「すぐ帰ってくるから! ごめんね。辛いと思うけどもう少しだけ待ってて」 そう言って間宮は冬愛を抱きかかえてベッドの中へと戻すと、上着を掴んですぐさまどこかへ飛び出していった。 朦朧とした意識の中、再び冬愛は考える。 (なんであの男は、見ず知らずの他人にここまでするんだ……?) しかし今の彼には答えを見つけ出すことなんて出来ない。 その代わりに無意識に自分の手が自身のものへとのびていき、気づけば硬くなったソレを上下に一生懸命扱き身体に籠っている熱を放出させようとしていた。 「……はっ……はぁ…………んあっ!」 他人の家でこんなことをしてはいけないと思うのに、動く手は止められず逆にもっと気持ちのいい所へと移動していく。 (まだ……足りない) 手のひらいっぱいに白濁を吐き出すが、それでも満足することは出来ずグチュグチュと音を立てながら更に動かす手のスピードを上げる。 「あっ……あっ!」 それからしばらくの間、冬愛は焦点の合わない瞳で天井を見つめ口からははしたなく唾液を溢しながら鼻にかかった高い声を部屋に響かせていた。 「――っ!」 だから、息を切らしながら間宮が部屋に戻ってきた様子も冬愛の視界には入っていなかったのだ。 「Ωの発情ってこうなっちゃうんだね。……ごめんね。少しチクッてするよ」 「ん゛~!」 太腿へ感じる突然の痛み。 間宮が刺した抑制剤の痛みに初めは叫びにも似た声を上げていた冬愛だったが、だんだんと薬が効いてきたのか表情が穏やかになり手の動きも少しずつ収まってくる。 「また、綺麗に身体を拭いといてあげるから……ゆっくり休んでいいよ」 「ご、め……んなさ……」 謝罪の言葉を伝える途中で、冬愛は再び糸が切れたように意識を手放した。

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