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第2話
昨日の事など無かったかのように、俺はいつも通り会社へ出勤した。
でも全く気にならない訳でもない。
ガラス張りになっている所から違う部署にいる佐智を目で探す。
一言文句でも言ってやろうかと、座ったばかりの席を立ちあがったと同時に部長から呼び止められた。
「長谷川くん、ちょっといいかね」
「はい、なんでしょう」
「我が社が新しく事業を展開しているのは皆が知っての通りなんだが…。実はね、その事業展開で少々人手が足らないようなんだ。そこで君に行ってもらいたいんだが」
「俺に、ですか……」
「うちの部署の稼ぎ頭に抜けられるのは少々痛手だが、安心して任せられる。その上向こうに貸しが作れるからね」
「はぁ……」
部長は誇らしげな感じで俺の肩をたたいてきた。
まぁ確かに自慢じゃないが部署内での俺の営業成績は群を抜いている。
部長としては“手を貸すのは良いが自分達が下に見られるのは癪だ”って所だろう。
「それでだね、急で申し訳ないんだが今すぐ行ってくれんかね」
「はい、分かり……は?今から、ですか……?」
「出勤してきたばかりで申し訳ないがお願いできるね?それじゃ私は会議があるから、
長谷川くん頼んだよ」
部長からの突然の申し出に驚きを隠せない俺をそのままに、手を上げて笑顔を残して部長は立ち去って行った。
「まじかよ……っと、そういやぁ佐智はっ」
佐智に声を掛けようとしていた事を思い出し、視線を彷徨わせる。
「あれ……居ないじゃん。ま、今日はどのみちもう無理だしなぁ……後から連絡すれば良いっか」
佐智に声を掛けられなかった事、出勤しての突然の出張とに頭を巡らせていて、この時も後から後悔する事になるとは思いもしなかった。
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