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第4話
『早く帰って休みてぇー……』
夜遅い時間になってしまったが、出張先からやっと解放されたと言う安堵と途端に押し寄せてきた疲れからか歩く速度が少し緩まる。
「何か食べてくかぁ?今から帰ったトコロで家になんも無いもんなぁ……」
そう思い立ち、先の道を折れた時だった。
小さい声ながらも少し言い争うような声が聞こえ、何気なくそちらを見ると……。
「佐、智…?」
「かけ、る……何でここに……」
「ここにってお前こそ何でこん…………お前、誰?」
こんな時間にお互いが居た事の不思議さもあったが、それと同時にもう一人。
そいつは、うつむいていて顔はよく分からない。
「海老澤さん、俺、帰りま……」
確か、佐智が教えているヤツじゃなかっただろうか。
俺は聞き覚えのある相手の声を遮って名前を呼んだ。
先程の少し言い争うような声、田代の気まずそうな表情、何より佐智の少し着崩れたような首元で俺は気づいてしまった。
途端に頭に血がのぼり、そのままの勢いで佐智の腕を掴んで引き寄せる。
「田代、こいつが迷惑かけたみたいで済まなかったな。後は俺が送るから」
「え、でも……」
「俺が、送るから」
「は、い……分かりました。先輩方お疲れ様でした」
俺の顔つきと口調がきつく変わった事に萎縮した田代は頭を下げて早々に立ち去って行った。
それでも俺の腹ただしい気持ちは収まらなかった。
「俺達も帰るぞ」
「え、どこに……」
「お・れ・の、家にだよ。ほら、行くぞ」
「ちょっと離してよ、腕痛っ……」
「は?こうしていないとお前逃げるだろ」
強く掴まれた腕に痛みを訴えようが俺は知らない顔をして、ずんずんと歩き始める。
俺が気の進まない出張に行っている間に、こいつは何してるんだよ。
あんな、あんな奴に……。
「くそっ」
忌々しい気持ちを吐き出すかのような俺と居心地の悪さに逃れたくても一緒に行くしかないこいつ。
終始無言のまま俺の家へと歩いて行った。
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