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第2話
ラシェル視点
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「―……逃げられてしまいましたね……」
「……ああ……。でも、この山……に居る事は分かったんだ。……ここは一旦離れて、様子を見ながら再度接触を試みよう」
「そうですね。では、野宿の準備をしましょう」
そう。押してダメなら、引いてみる……のだ。
「……はぁ……」
しかし……やはり、そう上手くはいかないな……。
俺は思わず夕食のシチューを口にしながら溜息をついた。
思い出しているのは、昼間出会った勇者様だ。
「…………」
それにしても、すごい脚力……、肉体美だったな……。
あの綺麗に割れている腹筋……押したら、やっぱり硬いのかな……。
腕も脚もしなやかな筋肉がついていて、力強そうだ。
胸筋も厚いし、背中も美しかった……。
あの黒い髪の毛。艶を出したら、とても美しく輝くに違いない。
そして、どんな顔や声をしているのか……。
ああ、色々な所を触れてみた…………
―……は! 俺は、何を……! な に を!???
「~~~~っく!!!」
うー! うー! 体温、上昇するな!! す る な!!!
「……ラシェル様、急に何をなさっているんですか?」
「けっ、健全な精神を取り戻す為にスクワットをな!!!!?」
「……食事中、ですが……? お座り下さい?」
「す、すまん……」
不味い。従者長のナフスが静かに怒っている……。
ここは大人しくさっさと食事を終わらせよう。
そして俺はさり気無く彼から離れ、木に背を預けて食事を再開した。
パンにシチュー。
王族だからって、特別メニューなんかない。みんなと同じだ。
それを一度も不満に思った事は無い。
二つとも、美味いし、魔法で保存や調理が完璧だからな。両方、作りたてだ。
しかもなるべく味に飽きない様に、俺に捜索隊の指揮が引き継がれた時にこの一行の郷土料理を適当に混ぜさせている。
もちろん、オリジナルも真似て発展させた物も……様子するに、何でも有りだ。
「……食べ終わったら、この近くの泉に行くか……」
頭を冷やして、汗や汚れも流そう。
そうだよ。サッパリしよう。
サッパリ、スッキリすれば、何か良い案が浮かぶかもしれない!
そう決めて俺はシチューからパンに切り替えようと、そちらに手を伸ばした。
しかし、そこにあったのは……
「……あれ? 俺のパンが無い……が、黄リンゴがある??」
パンがあった位置には大きな黄色いリンゴが……パンと同じ個数、置かれている……。
…………これは一体……?
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