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第6話

ラシェル視点 ++++++++++ 勇者様に、目元を舐められた……。 "ちろっ"と出た勇者様の赤い舌先が生々しい。 そして驚き固まる俺の目の直ぐ隣りを"ちゅっちゅ"と……。 軽いリップ音が、軽く感じない。 そして、俺に更なる衝撃と試練が……。 ―ぺちゅ、ぺろぺろ…… 「……!??!?」 「…………」 勇者様に、唇を舐められた!!!? 更に、"ニコ!"と笑顔をされ…俺は泡を吹いた。……心境的にだが! そこから、俺は勇者様に唇をペロペロされ…それは森から灰色の狼が俺達の間に身体を捻じ込み、無理矢理引き離すまで続いたのだ。 狼は怒りの呻り声を上げ、勇者様はキョトン顔。 それは、何に対して怒られたのか分からない子供の顔。 ……何だか、何かが引っ掛かって、モヤモヤ…してくる。 「キキッ!」 「ゥウ~~~……」 そしてこれまた突然現れて狼の背中に乗り、頭を叩きながら狼を愉快そうに慰める白い小猿……? やけに"人"くさいな……。 おっと! それよりも…… 「俺の国に一緒に来て下さい! 一生、大事にします!!」 「!???」 勇者様に抱き付いてしまった! ああ、程好く鍛えられた筋肉の質感が…勇者様は腰布しか身に付けておられないから、よく分かる…。 俺より背が高いから、顔は見れないけど、心臓がバクバクしている。 「……勇者様、俺と一緒に……お願いします……」 脳内を様々な映像と感情が混ざる…。ここまで、長かった…。 勇者様達が大量に召喚され、三年位狂竜と戦い、……無理だった。 そして最後の望みが発見されて、引継ぎながら十五年、世界を捜し回った……。 そして、ようやく俺の時に……発見出来た。 王城の星の碑石から、星が無くならなければ、勇者様はどこかで生きている。 怖かった。 星が、見つけられないで、消えてしまうのではと……。 でも……。 涙が出そうなのを必死に堪えて、勇者様の顔を見上げてお願いする。 それと同時に、"ぎゅ!"と更に力を込めて抱き付く。 見上げた先の勇者様は顔を真っ赤にして、困り顔でワタワタしている。 ―ぽろ…… その時、俺の目尻から涙が零れた。 すると、ここでまた奇跡が…… ―ちゅ! 何と、勇者様が俺の涙を吸って、俺を覆うように抱き締め返してくれたのだ! ふ、ふぉおおおおぉぉおお!! 勇者さまぁああああぁあ!!!! そして"俺も! 俺も!"と背伸びする様に更に抱きついたら… 「ぃだぁあああぁッ!!?」 何と、あの灰色狼に尻を噛み付かれたのだ! 俺の突然の絶叫に勇者様は驚いて、俺を放してしまった! ああああっ!! それから勇者様は俺の尻に噛み付いている狼を血の気が引いた顔で剥がすと、"ペコン!"と頭を深く下げて狼を抱えて走り去ってしまった……。 「ゆ、ゆうしゃ……さまぁあああ!!! ぉ、俺の尻の肉くらい、何グラム……キログラムでその狼に捧げますから、戻って来て下さい…!!!」 「ラシェル様……落ち着いて下さい! 発言が猟奇的ですよ!」 「ああああ……!!!」 勇者様はまた走り去ってしまった……。もう少しだと……無念……。 ……だが、俺の手には何だか分からないが黄色い薄い花形の……勇者様の私物が残った。 「…………勇者様の私物……」 ……だが、だが、だが……!!! カムバック・トゥ・ミー!!!!

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