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第7話
ヤトーシュカ視点
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大事に大事に……とても大事にして、十八年も隠して大切に育ててきたのに……。
まさか、こんな事になろうとは……!!!
「俺は認めない!!!!」
しかし……あの者達は勇者のヤマトを、ここから確実に連れて行く……。
「……俺の力が及ぶここなら、人共から……あの災いから遠ざけられると思ったのに……」
おのれ! おのれ! おのれッ……!!
「……こうなるのが、あいつの"運命"なんだ……。やはり……逃れられない……。諦めろ、ヤトーシュカ」
「……ペルク!」
忌々しい……!!!
「こんな事なら、早々に……人化して、主としてヤマトが精通した時に"抱き締めてもらえば"良かった……!」
「ヤトーシュカ……それは中々生々しい発言だな……」
「ペルク、俺はヤマトをあいつ等に渡したくないんだ! イヤなんだよッ!!」
山の中の隠れ洞窟に、灰色の狼から人化した俺の怒りが混じる声が響く。
「……ヤマトがここを離れるなら、俺も付いて行く……」
「落ち着け、ヤトーシュカ! 今、この山一帯はお前の力で護られているんだぞ!? お前が居なくなってどうする!」
俺と同じく人化した白い猿のペルクが、慌てて俺の腕を掴む。
ペルクは俺の古くからの友人であり、右腕的存在の白い小猿だ。
「……俺は生涯の主はヤマトだけだと、決めている。主と共に行動するのは、当然だ」
変に蒼暗い星の夜、あの漆黒の瞳に出会って……俺は自分の運命を知った。
俺の唯一の主。俺の最愛の王。
……その幼い無垢で美しく、柔らかな魂に魅せられた。
そして……。俺の魂はヤマトに捧げようと直に決めた……。
彼の足元に居ると安らぎを感じ、その手に撫でられるとあらゆる力が漲る。……素晴らしい多幸感と万能感。
この世界で他の種族より長く生きる事をただ強いられる、無為な日常に……灯りがともった。
そう。俺は半分が"神"の存在。デミゴッド。
神格のある狼と、人の間に生まれた存在……。
そして、ペルクは猿の神と人の間に生まれた半神だ。
「……なら俺だって、ヤマトが大、大、大好きなんだ。俺も行く。当然だろ」
「ペルク……」
「それにヤトだけだと、暴走して色々ヤバそうだし?」
「……否定出来ない……」
「キキッ! 外見が大人でも、ヤマトの中身……知識や精神はこの世界に来た幼子の時のままだ……。
成長させるにしても、変に壊れないように注意が必要だろうからな」
「ああ」
神は無垢なものを好む。俺の"神"の部分が、それを求めた。
それがヤマトの内面を、幼いままにあそこまで育てた理由だ。
大事、なんだ。とても……大事な人なんだ……。
「……この山一帯から離れる時、俺の"魂の半身"を置いて護らせる。力が多少落ちるが……仕方ない……」
俺は左目、半身には右目を。
そして特殊な眼帯を着けて、瞳が無い状態なのを隠す。
この状態はヤマトに聞かれた時に……。
まだ異界の言語は苦手だがいつも通りテレパスを使い、カタコトの言語変化で話せば良い。
その時、ヤマトの前で初めて人化しよう……。
ヤマト……運命がお前を連れ去るなら、俺がお前に着いて行く!
どこまでも……どこまでも…………ヤマトと共に!
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