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第8話

ラシェル視点 ++++++++++ 「ラシェル様、これは"ひらがな"と言うものだと思われます」 「ローティス、お前分かるのか!?」 勇者様が置いていかれた私物を仲間達と囲み、ウンウン呻っていたら、魔術師のローティスが突然答えを口にした。 しかし、"ひらがな"、とは? 「……"ひらがな"と"かたかな"を、以前の勇者召喚で、ニホンジンという種族の者から少々教えて頂いた事があります」 「ほう?」 どうやら"ニホンジン"というのは、基本"ひらがな"、"かたかな"、"かんじ"、"ろうまじ"……が操れ、主に"えいご"なる他国のものも半普及状態だという事だ。 そして、その四つの要素を一纏めで"ニホンゴ"と言っていたそうだ。 ……まぁ、他に色々細かい説明があるようだが、そこは省かせた。 魔術師のローティスは、ニホンジンとそんな交流をしていたのか……。短期間ながらも、随分親密な関係だった様だな。 話す時、何か焦がれる様な……寂しそうな顔を見せたのが気になるが……勇者達の末路を考えると、その表情の意味が分かる気がする……。 ローティスは"彼"に逢いたいのだろう……。 そして説明を終えるとローティスは自分の荷物から丁寧に箱に仕舞っていた二枚の紙を引っ張り出し、簡易机の上に広げてきた。 「……文字の早見表か」 「はい」 これは便利だな。 「ちなみに"ひらがな"と"かたかな"は音は同じで、文字の形が違うのだそうです」 「なるほど」 面白い。 「……この形からいくと、これは……"やまと"と読めますね」 「……"やまと"……"ヤマト"……」 勇者様の私物から、"ヤマト"という言葉が分かった。 しかし、"ヤマト"とは……? 何を指しているのだろうか? 「……もしかして、それが勇者様の名前かもしれません」 「その理由はなんだ、ローティス」 「はい。私にニホンゴを教えてくれた勇者の名が"ミコト"と言うのですが、どことなく……響が似ている気がするのです」 「なるほど……?」 "ミコト"に"ヤマト"か……ありえる……か? 「"ヤマト"……様……」 勇者様の名前……。とりあえず確定しても良いだろう……。 俺が静かに感動にヒタヒタに浸っているとナフスが横に立ち、話し掛けてきた。 「―……ところで先程、随分とヤマト様に熱心にペロペロされていましたね?」 「はぐぅ!!!」 そうだった! あれ、全員に見られてた!!! 公開ペロペロ!!! 顔が熱い……! 自分の顔が、一気に真っ赤に変化しているのが分かる。 「ラシェル様、それは"親愛"の証かもしれません……。つまり……」 「……ナフス?」 "つまり……"? 何だ、ナフス……。 「ラシェル様も、ヤマト様と同じ行動をして仲間意識を持ってもらっては?」 「……!!!???!?!?!」 や、ヤマト様の……唇をペロペロ……だと……!? あの、薄く……、滑らかな朱に染まる……唇を、俺が舐める? 縦横無尽に舐めつくす? ……ペロペロ……ペロ……ペロ……ペ~ロペ~ロ、ペペロペロ、……ペロ? 「や、やる! ナフス、ナイスだ! 頭良いな!」 「当然です」 「同じ行動で示すのが大事だな!?」 「はい」 よ、よぉ~~~し! 俺もたくさん親密なペロペロするぞ!!! そしてあの狼に泡を吹かせてやる!!! 考えてみたら、灰色狼に俺の尻が噛み付き攻撃されるなんて、おかしいだろ!

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