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第9話
ヤマト視点
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あの人……怒っているかな?
せっかくのパンとシチューを途中で置いてきちゃった……。
―……美味しい味……だったのに……。
ボクは昨日の事を思い出して、木の上で伸びをした。
太い木の幹にね、寝れるような場所を作ってるんだ。
こういうのは幾つかあって、これはその内の一つ。
何か果物を持っていって、交換して欲しいって、お願いしてみようかな?
ボクにウサギのパンを渡してくれた彼なら、お願いを聞いてくれそう……。
綺麗で、優しい男のあの人に幼稚園バッチを渡したままなんだよなぁ……。
言葉が分からない……。どうやって"返して"ってお願いしようかな?
それにしても……あの綺麗で優しい人……肌、スベスベで、唇はふんわりして、柔らかかった。
もっと仲良くなったら、ボクにもペロペロしてくれるかな?
―……でも、涙が……。
……突然の涙に驚いて、怖くないからね、って隠すように抱き締めた。
ボクより小さくて、細かった。
あと、良い匂いがした。ふわん、って。
何だか泣かない様に、ボクが"護ってあげなきゃ!"って思った。
「……さ……ヤ……ヤマトさ…………ま……」
……誰かがボクを呼んでいる……?
あ。でも、この声は……!
ボクは声に反応して、寝床から直ぐ隣りの木に飛び移り、それを繰り返して声へ急いだ。
早く、早く、早く……! 彼がどこかに言ってしまう前に……!!
―ザザザ……トスッ!!
「わ!」
「…………」
木の上から下りて、彼の前に立った。
ねぇ、ボクの事、呼んでたよね?
何か用かな?
「あ、あの。パンを幾つか持ってきたのですが……」
「!」
わぁ! 嬉しい! パンダに白いトラ、ネコさんのパンだ!!
―ちゅ!
ボクは嬉しさとお礼も兼ねて、綺麗な彼の頬にパルクがボクにするようなキスをした。
どのパンから食べようかな!?
ワクワクしながら籠に入っているパンを見ていたら、腕を弱い力で引かれた。
視線をその方に向けたら、顔が真っ赤な彼が何か必死に喋っていた。
……やっぱり何を言っているか、分からない……。
「あの……、ン……と、えっと、ですね……」
「?」
さらにボクの腕を引っ張って……しゃがんで欲しいの?
そう感じたボクは、もらったパンはそのまま足元に置いて、彼と視線を合わせる様にした。
それで、何の用かな?
すると……
「し、失礼します。……俺の……気持ち、です……ヤマト様……」
「?」
あ。今、ボクの名前、呼んでくれた!
名前のところだけ分かる。
ん?? 腕を掴んで……顔が近い? どうし……
―……ペロ! ペロペロ……ペロ……
「……ぅ……結構恥ずかしい……で、でも……。ヤマトさま……。……ン、ぁ……」
……ペロ……ペロ……ペロペロ……ペロペロ……ペロ……ペロペロ……
うわ……。ボク、夢がかなっちゃった!?
綺麗な人からペロペロしてくれてる!
しかもたくさん!!
ボクと仲良くしたいって事で良いんだよね?
嬉しいなぁ!
早速ボクもお返しするね!
「……ん!? ……は……ペロ……くちゅ、ちゅ……」
「ペロ……ペロ……ん? ん……れろ……んちゅ、ちゅ……」
……ん? 舌が合わさって……絡まってく?
これはこれで気持ち良いかも!
しかも綺麗な人が"トロン"ってしてきたよ?
顔も身体も真っ赤で熱そうだし……力が抜けてきてるけど、大丈夫かな?
ボクがちゃんと抱えて、支えてあげないと……。
あれ? ペロペロもいつの間にか唇が合わさって、舌が絡んだものになってるけど……。
綺麗な人の舌……程好く柔らかい……。すごく美味しそう……
―じゅる!
「……!!?」
あ。思わず舌を吸っちゃった……。
でも、何だか"ビクン!"って身体を震わせて、綺麗な人が泣いちゃった……?
慌ててボクから離れて、股間を押さえて走り出して……どうしたの? 何で真っ赤な顔で泣いてるの?
ボクが……泣かせちゃったの? 嫌われた? ボク……嫌われたの!?
いっぱいいっぱい……仲良しのペロペロしたのに……!
嫌われたくないよ!!
「~~~~ぅうぅ!!」
……追いかけなきゃ!
そして……そして、"ごめんね"ってキスして、仲直りのペロペロをたくさんするんだ!!
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