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第12話
ラシェル視点
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―……俺、実は長旅で欲求不満だったのかな……? ヤマト様と、あんな……コト……。
「……ペロペロ……ディープ…………くちゅくちゅ…………ごっくん……」
ヤマト様の……スゴク熱くて硬いし、太くておっきかった…………あの味も、嫌じゃ……
「ラシェル様? 戻られていたのですか?」
「ぅひょぉおおあぁお!!」
ナフスの声にお約束の様な奇声を上げてしまった……! 不覚!
そしてその時、更なる不覚事が浮かんだ。そう、何と俺は……
「私物を返し忘れた……」
掌には、黄色い花。
何だかドッと疲れが……。
しかも、あんな……事をした後で、何だか気まずい……。
「…………」
そもそも、俺達とヤマト様の言語は違う様で、共通認識がされてない様だった。
まぁ……異世界……だしな。
異世界召喚で呼ばれた勇者様は何か特別な……力が一つ備わるのだが……。
ヤマト様はどんな能力が備わったのだろうか?
ヤマト様の名前が分かった……書いてある、薄い黄色い花形を見ていて、俺はある事に気が付いた。
「俺、名乗ってない……!!?」
「…………」
うわ! ナフスが俺を"バカな子"認定してそうな目で見てる!
そうだよ! 今更だよ!
ましてや言葉も分からない状態……。
あ。いや、待てよ?
あの"ニホンゴ表"とローティスで何とかならないか?
つまり、ローティスにその場で翻訳を頼むのだ!!
そこで俺はナフスに「帰った」と平静を装って返答し、ローティスと共にヤマト様に再び接触する事を一方的に話し、その場から脱出した。
あのまま居ては、ヤマト様との親密度を上げる為のペロペロはどうだったか、しつこく聞いてくるのが目に見えているからな!
タカタカと駆け足で陣営内の魔術師達のテントの区域に入り、俺はローティスの名前が入った物を探した。
基本、全部同じ作りだからな。だから間違えないようにしないと……。
そして俺は入り口の布に"ローティス"と刺繍が施されている物を発見し、呼び掛けて中に入れてもらった。
「―……ローティス、明日はあの表を持って俺と共に来てくれないか。ヤマト様にちゃんと名乗りたいし、色々会話がしたいんだ……頼む!」
「はい、分かりました。勇者であるヤマト様と会話……楽しみです」
「う、うむ……」
良し。これで明日、ローティスを連れてヤマト様のもとへ行く事になった。
俺としても会話が出来るのは楽しみ……だが、若干ドキドキヒヤヒヤだ。
何で、かと言うと……ヤマト様と今日の様なペロペロ状態になるかもしれないか……
「……ああああああ!!?」
「ラシェル様!?」
そうだ……。この可能性もあるのだ!
ローティスとヤマト様がペロペロ……を、俺の目の前でする、可能性が!!!
「……………………」
「……そんな悲壮な顔をされて……どうされたのですか……? 具合が? 薬湯を作りましょうか?」
ローティス……この男、見た目は良い方だし、優しそうな雰囲気がある。
実際、俺に直ぐに薬湯を薦める優しさがある男だ。
もちろん、魔術師としても優秀だ。……俺が言うのはアレだが、この捜索隊に居るくらいだから、当然だ!
そしてそんなローティスに惹かれる者が多いのを、俺は知っている。
つまり、とても魅力的な人物なのだ。
……まぁ、ローティス自身は随分前から想い人がいると噂があるがな……。
だが、噂だから、どこまで本当かは……。
「ぐ……ぬぬ……!」
「???」
く……! こんな百面相を、俺がするなんてッ……!!
どうか杞憂であってくれ……!
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