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第14話
ラシェル視点
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世界共通の最大の敵である"厄最の狂竜"が出現し、大量の勇者様を召喚した十八年前、俺は六歳、だった。
そして俺には両親の他に、上には兄が二人に、下に異母兄弟である一人の弟。
異世界から呼ばれた男女の勇者に、強い憧れを常に抱いていた。
俺の記憶の中に居る最年少の勇者様は、自国に現れた十四歳の少年。
一番上の活発な兄は自国に現れる勇者様とよく行動を共にしていて、俺は兄がとても羨ましかった。
二番目の兄は自分の世界に浸るのが好きな人だからか、現れるどの勇者様に対してもあまり興味を示していなかった。
弟は俺と一緒に居るのが一番好きな様で、俺は一番目の兄を羨ましく思いながら甘えてくる可愛い弟の小さな手を引いていつも遊んでいた。
召喚された事で、何かしら一つだけ"異能"が授けられた勇者様達。
召喚で一斉に呼ばれた百五十人の勇者の証の星を持つ彼らは不思議と一人ずつ、自身を呼んだ国に現れた。
そしてそこで暫らく城で基本教育と戦闘訓練を受けて、一人で戦いに向かわれた。
旅立つ時期はマチマチで、それは勇者様の中に満ちると決意が浮かぶのか、それはいつも突然だった。
俺はいつも流れる様にそれを受け入れていた。
そういうものだと、思っていた。
そして、勇者様に憧れ続けた。
……最後の勇者様の捜索隊の、何度目かの引継ぎが自国に回ってきた時に自分から参加を願い出た。
初めて、自分達から勇者様を探す旅……。
それに、絶対成功せねばならない。
地上で星を探す旅は、強く大きな期待が寄せられたのだ。
そして王位継承が三番目な俺だが、誰も反対しなかった。
むしろ、王族の参加が喜ばれた。
ああ……弟が少し剥れたかな?
まだ学生だから、付いていくと言ったのを俺は許さなかったんだ。
自国の旅立ちを祝う祭りにお忍びで二人で遊びに行ったら、機嫌を直してくれたが……。
短剣を護身用と買ってくれて、とても良い物で嬉しかったな。今でも大事に身に付けている。
でも、夜に登った星見の丘で"大きな怪我をしないお呪い"と軽くキスされた時は、流石に驚いた。
固まっていたらナフスが直ぐに現れて、勝手に祭りに遊びに行ったのを怒られたのだが……内心、少し助かった。
……先が見えない旅に、弟はとても心配してくれたんだろう……。
しかし何だか俺を見下ろす弟の瞳に……"心配"以外に何かを隠している気がして……。
"何"か分からないが、突いても……無視も出来ない……そんな視線。
藪を突かなければ安全。沈黙は身を護る。
俺は気が付かない振りをした。それが一番だろうと、今でも思う。
……ちなみに俺は兄弟で一番背が低い……。
高さとしては、四男、長男、次男、三男……の俺、の順だ……。
……背の高さだったら、四男とヤマト様は同じ位かもしれないな。
うん? 俺は百七十センチ位だから、まぁ、普通だ。
弟がデカいんだよ。あれは百九十センチはいっているだろ……。
…………話しがそれたな……。
まぁ、勇者様達は特に騒ぐ事もなく、順応が早かった。
そして誰もが、元の世界にあまり未練が無い様に感じられた……。
「勇者様に"終わったら、ちゃんと帰します"と言っても、いつも曖昧な笑顔を返される…… 」
長兄がポソっと零した言葉……。
曖昧な表情を作る理由が何かあるのだろうか?
俺がヤマト様に同じ事を言ったら、彼もそう返してくるのだろうか?
しかし、この話をする前に、最後の勇者であるヤマト様には絶対に狂竜を倒してもらわなければならない……。
勇者様達はいつも一人で立ち向かわれていたが、俺は絶対にヤマト様に付いて行こうと思う。
でも、まぁ……とりあえず……
……早急に簡単な意志の疎通が出来るくらいまでにならないと。
土台となる文字が無いのだ。それは、こちらの世界の言葉を覚えてもらうか……。
「……ヤマト様を早急に城にお連れするぞ」
「ラシェル様……」
俺の声色からローティスが何かを察したらしい。
「ヤマト様、俺と一緒に来て下さい!」
「?」
あああ! キョトン顔可愛い!
……でも、そうじゃなくて……もどかしい!!!
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