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第23話

ヤマト視点 ++++++++++ 朝、ラシェルより早く目が覚めた。 目が覚めたら、綺麗なラシェルの寝顔。 得した気分で眺めていたら、ラシェルが目を覚ました。 ボクはぺろぺろと口の端を舐めたら、頬を赤くしながらラシェルも返してくれた。嬉しいな! そして、寝床をポンポン、ってしてからラシェルが出て行ってしまった。 何となくだけど、ボクに居ろ、って事なのかな? そんな事を感じながら居たら、ラシェルが直ぐに戻って来た。 ボクが寝床に座ったままでいたら、"ほっ"として微笑んでくれた。 居て、正解だったみたい。良かった。 するとラシェルはボクの手を掴んで、泉に来た。 キラキラと水面が光って、ラシェルも綺麗。 手を繋いで、今度はボクが先頭で泉に入った。 ラシェルはボクの手を握ってそのまま着いて来てくれる。 そうだ! ボクがラシェルを洗ってあげる! 山のみんなを洗った事があるから、大丈夫だよ。 結構、好評なんだ~! 大切にするって気持ちを込めて、手を掴んで水を掛けながら腕から指先までニギニギ洗う。 石鹸とか、あれば良いのだけど……。残念だけど、ここには無い……。 でもね、この泉、すごいんだよ! 浸かるだけで綺麗になるし、この水で洗うと少しの怪我なら、直ぐに治るんだ! ……あのね、突然だけど……ボクはこの世界の住人じゃないんだ。 ……この世界に来た朝、ボクは幼稚園バスでウトウトしていたら突然強い衝撃が横から来た。 夢の中では、大型犬をモフモフしていたのに…。 それで"ふわ"って身体が浮いて、ゴロゴロ回転して全身が色々どこかにぶつかって……。 皆の「痛い」って泣き声と、自分も痛くて動けない中で真っ暗になって目を開いたら、この山に居たんだ。 周りには誰も居なくて、幼稚園バックも無くて、スモックの裾でいっぱい涙を拭っていたら、大きな灰色の狼……ヤトーシュカが現れたんだ。 とっても大きくて震えていたら、牙が目立つ大きな口を"バカッ"と開いて……。 ボク、食べられる、って! ……でも、ボクは食べられなかった。 胴体を柔からく噛まれて、この泉に運ばれたんだ。 しかもボク、驚き過ぎて……漏らしちゃったんだよ……。 そしてそこには小さな白い猿のペルクが居て、ボクにオレンジ色の木の実をくれたんだ。 それから今まで、この山で暮らしてる。 この山以外は怖い所で、ボクなんかじゃ暮らしていけないって、ボクがとある方向を見ているとヤトーシュカとパルクに決まって散々言われた。 ヤトーシュカが「ヤマトをバリバリ食べる為に怪物が呼んでいるんだ」と言ってくるものだから、怖くてそういう日は抱き付いて寝た。 ……パルクも「そうだぞー」とか肯定するから、きっとそうなんだ……。 でも、ボクは今度は"外"に行く事になった。 ……ひ、一人じゃないから、大丈夫、って事だよね! それに山以外から来たラシェル達は強い筈だから、一緒に居れば大丈夫だよね!? ね!? ……ふぅ……ちょっと怖いドキドキがしてきた……。話題を変えよう……。 あのね、ボクとね、ヤトーシュカとパルクは頭の中でお話しが出来るんだよ! ……他の動物達は出来ないんだけど、何となくボクの考えを察してくれるみたいで、みんな優しい。 ラシェル達とはそれが周りの動物達と同じで、出来ないみたい……。 あーあ、出来たらすごく便利なのに……。 「……ヤマト様、そろそろ腕……から別な場所へ……。いえ、自分で洗いますから……」 ラシェルが何か言いながら腕を引こうとしてる……? ボクから離れちゃ、ダメ! ボクはそんな気持ちからラシェルの後ろに回って、背面から覆うようにして今度はもう片方の腕に取り掛かった。 ラシェルが"ビク"としたから、「大丈夫だよ」って、頭に頬をスリスリしながらスベスベなお腹を撫でて、手の平をにぎにぎ洗った。 リラックスしてくれると思ったのに、ラシェルの身体が益々強張っちゃった……? どうして? こうすると皆"ふにゃん"ってなるから、ラシェルもなると思ったのに……。 ラシェル? 大丈夫だよ? ナデナデ、怖くないよ? 「……その様な触れ合いをジークラン様に見られたら、ヤマト様がメッタ刺しにされますよ? ラシェル様、お気を付けを……」 「な、ナフス!???」 「?」 「お二人の着替えを持ってきました」 ほぁ。何か持って現れたこの人も綺麗。綺麗な男の人……。 でも、まぁ、ラシェルが一番綺麗だけどね! 「ヤマト様、この服を……」 ラシェルから服と靴を渡された。 どうやら、一番大きな騎士さんの服をボクのサイズに少し直してくれたみたい。 ありがとう、って気持ちを込めてペコンとお礼をした。 ズボンとシャツ。下着……の代わりに何だか布を巻かれた。靴もまぁ、大丈夫。 こういう服、本当に久し振りだな。 だって、幼稚園の時の服はどれも着れなくなってるし……。 腰布はパルクがくれたんだ。 着替えが終わったら、今度は朝食が出て来た。 ハムとチーズを挟んだパンと、カップにコーンスープだから、汚さないで食べれるよ! スプーンはまだ苦手だけど……。 ラシェルにスプーンを借りて、練習しようかな? そうしていたら、人の形になったヤトとペルクが現れた。 ヤトはシュカと分かれた後みたいで、右目に眼帯を着けている。だからこれは"ヤト"。 それにしても、二人とも準備してきたみたいで、服装がこの前と違う。 大きなマントを着けていて、ボクにもそれをくれた。 あと、荷物があって、ボクの代わりに全部してくれたみたい。 おっと。ボクの腰布も持っていくんだね! 『ヤト、パルク、準備、ありがとう』 頭の中で考えて、二人に送ったら、ニコ、って笑ってくれた。 うん、やっぱり、これは便利! 「!」 後ろに視線を感じて振り向いたら、山の皆が僕達を挨拶に来てくれたみたい。 たくさん会いに来てくれて……。 ボク、じんわりしちゃった……。 でも、ここは元気良く笑顔! ―……それじゃ、行ってきます!!

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