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第3夜

墓といっても、家のすぐ傍の竹藪の中にある、小さな丸い石だ。 そこに花を手向け、誦経する。 その後、寺から紙を届けに来た小間遣いに気になる話を聞いた。 やんごとない身分の姫君が、悲しい恋に傷付いた心を癒やす為、この近くで療養し始めたという。 「なるほど、そういうことか」 どうやら我が家は、姫君の隠れ家と間違われたらしい。 「また、来るか?」 「さぁ、どうだろうな。届け物も済んだと思っているだろうし。もう来ないだろう」 「だと、いいがな」 アザミは溜め息をつきながら、夕餉の支度を始めた。 「なに、来たら来たで、詫びの酒でももたせて帰すさ」 私は届いたばかりの紙を調べながら、のんびりと答えた。

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