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第3夜。。

徐に、笛の音が聞こえてきた。 「せめて、一曲お手合わせを」 優しい音色は、低く高く、琴を誘うように流れてゆく。 それで興が乗ったのか。 アザミは、応えるように、和音を幾つか弾いてみせた。 途端に、笛の軽やかな調べが響き、それに続いて琴の音が津波のように押し寄せた。 (なんと!見事な……) 中と外、まるで真逆の二人が、合奏しているのを聞きながら、私は知らず笑んでいた。 楽の音が途切れた後も。しばし心地よい余韻にひたっていた。 「では。今宵はこれで。また明日、まいりますとお伝え下さい」 蔀戸越しにも、男の弾んだ口調はよく判った。 「あれは何だ?あんなに続けて吹くヤツが居るとは思わなかった。おかげで引きずられてクタクタだ」 アザミがくたびれた様子で、私の部屋へやって来た。 「そうかもしれないが。たまにはいいじゃないか?」 「俺は、朝が早いんだ。付き合いきれん」 しきりに眠いと言いながら、アザミは寝間に入ってしまった。

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