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第19話 (注: レイプ描写あります)

「ほら、ユーキ、しっかりして!」 「あーあ、こりゃもう記憶にも残らないだろ。薬もいらねーよ」 断続的に覚えているのは、人通りの少ないさびれた道を支えられながらずっと歩いて行き、靴を脱がせてもらい、誰かの部屋に上がり込んだ事。 キヨだけでなく、複数の男たちと。 その後の事も切れ切れにしか覚えていない。 強い煙草の匂いの充満する部屋では大音量でポルノ動画が流れており、常に誰かがヒステリックな声で笑っていた。 泣こうが(わめ)こうが、他の住人が来る気配はなかった。 引き摺られて行った風呂場で、男の一人に服を脱げと言われ、ぼうっとしていたら頬をピタピタと叩かれ、酒とたばこ臭い口でキスをされて「早く脱げよ」とドスの効いた低い声で命令された。 酔いの回った覚束ない手で袖のボタンを外すのに手間取っていと、我慢できなくなった男が無理矢理シャツを引っ張って脱がし始めた。 「や…やめて」 言った途端頬に強い衝撃が走った。叩かれた勢いで壁に強く頭をぶつけて、自分が何をされたのかすぐには分からなかった。 ――どうして、僕はここにいて、知らない人に殴られているんだろう? ぼんやりとした頭では、何も結論は導き出せなかった。 男は腕に引っかかったシャツを脱がすのを諦めて、くしゃくしゃになった布を類の手首にぐるぐると巻き付け、腕を引っ張って浴室へと連れ込んだ。 そのままシャワーを掛けられて身体中を洗ってゆく。しつこく肌を這う掌の感触がねっとりとして、いくらお湯を流しても肌に残るようだった。 次に記憶に残っている風景は、押し倒された時に見た床。掃除もされておらず、油か汗にほこりや髪が閉じ込められていて、べっとりと肌に付いた。 怒鳴られたりたしなめられたりしながら、手脚を押さえつけられ、類の身体がこじ開けられていった。誰にも触れられたことのないそこに武骨な指が遠慮なく突き立てられて、暴いて行く。 「どう?ここ、感じる?」 乱暴に動かされる指に勘違いした台詞。けたたましい音の中で自分を囲み、性欲を隠そうともしない男たち。 ひたすら拒絶の言葉を吐いていたけれど、その内に抵抗する気力も体力も尽き、されるがままになった。 ―――もういい、黙って早く終わらせてもらう方がいい。 そこから先は何も感じないようにただ心を殺した。 永遠にも感じた地獄のような時間の途中で、記憶は途切れる。 **** 気が付いた時には、周りの騒音の質が変わっていた。怒鳴り声や壁にぶつかる音がした後、揺り起こされて名前を聞かれた。制服を着た警察官が忌まわしいものを見る様な表情で類の顔を覗きこんでいる。 身体を起こそうとした途端、胃の内容物が込み上げて嘔吐した。泣きながら、吐いた。 吐きながらようやく声を出すことができた。 身体の奥底から流れ出たのは獣の咆哮のような、慟哭のような、言葉にならない音だけだった。 誰かが、吐しゃ物を採取している。 ――助けて。汚い。僕が吐いたもの。気持ちが悪い。もう誰も触らないで! 毛布越しに義務的に自分の背中をさする手にすら嫌悪感を覚えて鳥肌が立つ。 痛みと吐き気と眠気の中で混濁する意識。 何を後悔するべきだったのかも分からなかった。

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