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第22話

 週末、密は相変わらず図書館に通っていたけれど、あれ以来一度も類を見かける事はなかった。担任ならば休んでいる理由そのものでなくても、何かヒントを教えてくれるかもしれない。分かっていても、そんな事を聞く理由を詮索された場合の言い訳を考えあぐねて、聞けずじまいだった。  理由なんてない、なんとなく、でもどうしても会って話がしたいだけだった。  他によい方法も思いつかず、散々迷った挙句、図書館で交換した連絡先にメッセージを送ってみた。 (有本) 元気?体調大丈夫、それとも隠れ受験勉強?迷惑でなければノートとか持って見舞い行くけど?  自分より勉強のできるやつにノートも何もないけど、と思っていると既読が付いて暫くしてから『ありがとう』という短い返事が来た。 ――何だよ、ありがとうって。  行っていいのか、心配したことに対する礼なのか、答えたくなくてはぐらかしているのか密には分からなかった。 短すぎる返信に、逸る気持ちを落ち着かせながら書いた。   (有本) 家?今図書館にいるけど、行っていい?  何度も何度も書いては消して直したようやく送ったメッセージは直ぐ既読になった。 そして長い沈黙。  送らない方がよかったのか、でも既読ついてるから今更削除したって仕方がない。 じりじりしながら画面を見つめ続けていると、5分ほどして入力中表示が出て、返事が来た。 (佐藤) いいよ。駅に着いたら連絡して。迎えに行く。  たったそれだけのそっけない文。直ぐに暗記できるようなその一行の軽さが胸を締め付けた。  荷物を鞄に突っ込んで席を立った。  途中、お見舞いという名目で行くことを辛うじて思い出し、少し遠回りしてコンビニに寄った。飲み物と、限定発売のケーキを携えて店を出る。  駅まで歩いて15分の道のりがもどかしかった。  はやる気持ちの理由はしっかりと自覚していた。  会いたくて堪らない。一度認めるとその思いは止めどなく溢れてきて、密の身体中を駆け巡る。本当はケーキなんて投げ捨てて炎天下を走って行きたかった。  週末のせいでいつもより閑散とした駅に着いてから密は類にメッセージを送った。今度はなかなか既読にならない。 ――やっぱり嫌だったのか。ちょっと強引に書きすぎて断り辛かったんだろうか。  ここまで来て類に嫌われたではないかという不安が広がり、さっきのやり取りを何度も見直していると、自分の方に近づいてくる人影が目に入った。

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