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第25話
身体の中でふつふつと湧く熱に戸惑って身動きできずにいた密の視界に、突然白いものが舞った。
両膝と片手を床についた類が、笑いながら密の顔に手を伸ばしてきた。
――え?え?
口元をまっすぐ見つめる視線に驚いていると、ティッシュペーパーを持った手が密の口元を拭った。
「っ!?」
とっさの事で驚いて声も出せずに真っ赤になった密を見て類が声を出して笑った。
「あははは、まだ付いてるから、自分で拭きなよ」
「何?」
「クリーム」
恥ずかしさのあまり乱暴に紙を奪い取った密の指が、類の指先に触れる。その瞬間、軽い眩暈と共に密の中で歯車がひとつ噛みあって動きだした。
心臓が高鳴り、全ての意識が類にさらわれてゆく。
何気なく見ていた周りの風景の陰影が濃くなった気がした。
ティッシュペーパーで乱暴に口元を拭いながら、紅潮する顔に気付かれないように俯いていると、類が膝を立てて立ちあがりながら手を伸ばした。
「ゴミ、捨てるから頂戴」
何も考えてなどいなかった。脊髄反射のようなものだ。
密は、ティッシュペーパーを受け取ろうとして差し出された類の手を掴んで、自分の方に引っ張った。
「わっ!」
重心を崩した身体が大きく傾いた。ただ自分の近くに引き寄せたかっただけで、転ばせるつもりなどなかった。
倒れる身体を抱き止ようと焦って腕を伸ばしたが、類は器用にバランスを取って体勢を立て直した。
「何するんだよ!」
きっぱりと怒る類の顔が、真っ赤になっていた。
何をしてるのだろうか、いや何をしたいのだろう?煩悶する密の身体の中で、何かが弾けるような感覚が身体に広がってゆく。
じわりと、指先や、体の表面が痺れた。
うっすらと気付いているその感覚のの名前に気付かないように、密は天井を向いて呟いた。
「あー、頭、おかしくなりそう…。何で?」
見上げながら訳の分からない事を言い出した密に、類の方が困惑して泣きそうな表情になった。
「何で、って、それはこっちのセリフだよ。密の上に倒れるところだったじゃないか」
一度弾みのついた気持ちは止まらず、密はひたすら類に触れたかった。でもそんなことはできない、嫌われる、怖がられる、軽蔑される。
気持ちを抑えようと両手で顔を覆い、俯いた。
「俺、マジでおかしい。ごめん、本当にごめん」
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