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第35話
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気まずいまま別れて一週間。学校では確実に会えるけれど、二人きりで話す機会は殆どない。
密と話すようになった類は、必然的に勝田や堀田とも一緒にいる機会が増えて、余計に二人だけになるのが難しくなっていた。
ゆっくりと話ができたのは、しばらくたったある日の帰り道だった。いつもより人の少ない駅の待合室。二人で壁際のベンチに座って電車を待っていた。
「あの後、怒られた?」
「いや、怒られてはないよ」
ひどく心配されただけ、と類は心の中でつぶやいた。
学校を休みがちな理由を密が問うことはなかったし、類も事件の細かい内容を言うつもりはなかったから、どうして部屋で二人きりになっていただけで親が激しく反応したのか説明できなかった。
親には深く愛されている、そうでなければここに編入してくることはなかった。同性が好きだということを知った後も何とか理解しようとしてくれてはいる。
けれど、部屋で男の子と二人きりでいたのは流石に歓迎してはもらえなかったし、事件の事もあってもう二度とそんな事をしないように言われたのだ。
集団暴行を受けた後、両親は書類上離婚し、類が母親の旧姓 になる事で身元を辿りにくくしていた。母親の旧姓がどこにでもある名字だったこと、そして両親に自分を否定されなかったのは類にとって幸いだった。
事件後に受けていたカウンセリングもよいカウンセラーに当たって順調だった。
休学していた高校を退学して県外に引越。リハビリを兼ねて親の伝手 で転入したのがこの学校だった。
高校には戻らず、大検を受けるように促していた親に、学校に通いたいと類本人が強く希望した。
一年遅れでも同世代の人間と一緒に普通に高校に通って卒業したかった。そういう、些細な普通さがどうしても欲しかった。
都市圏の大規模校、コネさえあれば細かいことには目をつぶってもらえる。知り合いのいないこの土地だし一年弱だけなら、と親も折れてくれた。
それでも、噂はどこからか伝わり、興味本位の人の口から口へと伝わって行く。
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