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第42話

 空港は混雑していた。短期長期の違いこそあれ、留学生らしい同年代の若者もちらほら見かける。  語学学校の開始に合わせてきたのか、きっとクラスにも数人日本人がいるだろう。  類の入ろうとしているのは、専門性の高い大学のコースに入るためのクラスで、そこにいる生徒はどこの国から来ていても一様にマイペースだった。  読み書きだけでなく、当然のようにディベートの練習も入っていた。 「では、ペアになって二対二でディベートを行います」  こういう時は、いつも音楽室で自分を見ていた密を思い出す。  ぼんやりしていると、他の人達はさっさと組になり、下のクラスから希望して上がってきた小柄な女の子と類だけが残されていた。  類を見た彼女は不満そうに眉をひそめて、仕様がない、と言った体で溜息をついて歩いてきた。 「何か気に障る事でもした?」 「ううん、いや、そうね。:ディベートであなたと組むのは好きじゃない」  少しずつ慣れてきたとはいえ、直接的な言い方に気圧された。 「それは…ごめん」 「謝らないで。あなたは、英語は上手。だけど強い口調で反論されると黙り込む、それがよくない」 「ん、自覚してる」 「じゃあちゃんと言いたいこと言って、相手の矛盾を叩いて、勝ちましょう」  自国で高校を卒業したばかりなのに、随分と強気なのはきっと育ってきた文化の違いなのだろう。もう戻らないと決めたんだから、それに慣れていかなければ。  大袈裟な程にっこりと笑って座るように促す彼女につられ、類も笑顔になった。

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