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閨※R18

 相手が厭がる術を熟知しているのと同様、太宰は相手が慶ぶ術すらも理解している。中也が閨事でのみ安心感を得られるのは其処に太宰の謀が存在していないからだ。女性を扱う時以上に中也に対しては心を砕いている。 「……キツくねぇか?」 「ん、大丈夫……」  必死に為っている姿が可愛いともいえる。普段の罵り合いを知っている人物が今の状況を見ようものなら目玉が飛び出るほど驚愕する事だろう。人より幾分か色素が薄く無茶をさせれば折れそうな細い太宰の体を、中也は壊れ物のように丁寧に扱う。  女性では無いのだから一寸やそっとの事で怪我をしたりはしないと始めの頃には伝えたものだったが、閨事に於いて相手を大切に扱う事に関しては男でも女でも関係が無いと中也は云う。  二人には決定的に相容れぬ箇所が存在した。  かく閨事に関しては、相手を優先する余り殆どといっても善い状況で衝突を起こす。そしてまた、相手を優先する感情が相手を思いやる心から生じる事にお互いが気付いていた。解っていても尚譲れないのは単純に頑固なだけだった。  己のナカで中也が脈打つ度太宰は切ない感覚に胸を締め付けられ、愛しさの余り更に強く中也の脈を感じようと腰に絡めた足に力を込める。  太宰の琴線に触れる度、僅かな隙間すら作らせまいと温かく柔らかな肉壁が中也自身を包み込む。互いを隔てる皮膚は体液によって卑猥な音を響かせ、衣擦れと寝台の跳躍音のみが無機質に響く室内に色を射す。  欲を云えば艶やかな吐息に乗せた嬌声や息遣いが更に強調されれば文句無しなのだが、此れもまたお互いが頑固故の結果といったところなのだろう。 「ッ、あ!」 「此処か?」 「ちがっ……、や、ぁっ」 「……『もっと』って、強請ってみろよ」  微かな筋肉の痙攣に中也はすかさず同じ箇所を執拗に攻め立てる。腰の裏が熱く疼く同箇所への刺激に太宰の喉元は反り返り、酸素を求めて浅い呼吸を繰り返す。  幽霊のように蒼白い肌は薄桜に色付き始め、無意識による腰の痙攣は中也の雄としての支配欲を駆り立てた。

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