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睦※R18

 口を開けば互いを罵る言葉しか出ない二人であっても、身に纏う衣類を取り払い触れる肌の細胞の一つ一つから互いの体温を直接感じる事の出来る此の瞬間ばかりは、普段よりは少しだけ守る事無く自らの感情を解放する。我ながら面倒臭い性分だと思う事は多々あれど、長い付き合いがあり常に自分を見てきた相手だからこそこんな面倒臭い自分の性分すら把握しているのだろうと感覚で読み取っていた。  双つの黒は双子の黒。何故か読み取れると解ったのは根本的な考え方が似ていると気付いてからだった。だから相手を優先して譲れない事も自分がそうだから仕方が無いのだ。 「太宰、凄ェ好き」  太宰が一つだけ自分と違うと思ったのは、嫌いという言葉を頻繁に口にする事と同様、好きという言葉も事あるごとに太宰に向けてくる事だった。中也は感情を隠す事が苦手で喜怒哀楽をはっきりと口に出す性質だ。それでいて素直過ぎるので嫌いな相手には嫌いと、好きな相手には好きと明確な答えを返す。ただその中也が好きという言葉を太宰に向けるようになったのは、口に出さないだけであって太宰も同じ感情を持ち合わせている事に気付いたからだった。  いつでも新しく遺されている左腕の傷痕に舌を這わせていけば、皮膚の奥へと直接届く生暖かい舌の感触に都度背筋は震え、塞がりかけた傷口に歯先を僅かに食い込ませれば一瞬だけ中也を強く締め付ける。まるで絡繰人形のようだと思いながらも間違いなく生きている人間であるのだと実感する事も出来た。  勿論、同性同士の間柄でありながら女性役を担っている太宰の肉体的、精神的負担は中也には計り知れぬものではあった。しかし不思議な事に立場に関しては揉める事が無かった。数多の女性と肌を重ねた太宰が譲ったといえば聞こえは良いが、譲っても良いと太宰に心境の変化を起こさせるに足る存在になっていた事を中也自身が何処まで理解をしているのかは定かでは無い。  胸も無ければ女性らしいしなやかさも柔らかさも無い。自分の体しか知らないという事は不幸なのではないかと考え及んだ時も確かに存在する。揺るぎない中也の気持ちが見えたからこそ太宰は其れを受け入れる事を了承した。  耳許から伝わる声はいつも訊くものと異なり直接鼓膜を揺らし、擽ったさから逃れるように頭を振ると至近距離の顔に両手を添える。隠す物が無ければ羞恥も何もあったものではなく、互いの額を重ね焦点の合わない距離で視線を向ける。 「……もっと、私の中を中也で満たしてくれ」

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