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 ゆっくりと、ワイシャツのボタンがはずされていく。  嫌だと首を振り、夏目の手首を掴むと、彼はすっと目を細めた。 「そんなに辛そうなのに?  ここ、がちがちじゃない」  言いながら、彼は俺の股間に触れる。 「ひっ……」  服の上からだって、人にそこを触られたことなど殆どない。  思わず声をあげて身をよじると、夏目はクスリと笑った。 「処女みたいな反応だね」 「何、言って……」 「痛くしないとは言わないよ。  君のここは、受け入れるためにできていないからね」  手がおりていき、尻を撫で上げる。  当たり前だ。  ベータである俺のそこは何かを突っ込むためにできてない。  オメガじゃないんだ。自分から濡れることもない。 「な……飛衣、なにするつもり……」  俺が問いかけると、彼は笑みを浮かべて露になった俺の胸を撫でた。 「君は寝ているだけでいいよ。  俺は好きにするから」 「好きにって……あ……」  乳首を指で撫でられ、思わず声を漏らす。  指先でクニクニと乳首をいじられて、感じたことのない痺れが這い上がってくる。 「ふ、あぁ……」  自分の声とは思えない、甘い声が漏れ出て俺は思わず口をふさいだ。  夏目が、俺の首筋に顔をうずめる。ねっとりと首筋を舐められ甘噛みされ、ちゅうっと音を立てて吸いついてくる。  角度を変えて首筋を舐められ吸われ、手では乳首を捏ね回される。   「ん……飛衣……」 「朱里、気持ちよさそうだね」  夏目の甘いテノールが、耳に絡みついてくる。  夏目が俺の身体を撫でるたびに、中心に熱がたまっていく。  このままでいいのだろうか?  このまま、彼に好きなようにさせて。  まだ俺は葛藤をしていた。  逃げられる状況ではないことはわかっているのだから、このまま身をゆだねた方が楽に決まっている。  けれど、俺は男だ。  男に抱かれるのなんて耐えられない。  だけど甘い香りは確実に俺の身体を蝕んでいる。  確実に俺は欲情し、この熱を解放したいと思っている。 「ここ、苦しそうだね」 「ひっ……」  夏目の手が、スラックスへと掛かる。  ベルトを外され、ファスナーを下ろされて、抵抗もできず俺は下着と共にスラックスを脱がされてしまった。 「な……飛衣……」 「先走りが溢れてる。  まだ、これ触ってもいないのに。  そんなに気持ちよかった? それとも、匂いのせい?」  言いながら、彼は俺のモノを指ではじいた。  思わず俺は腰をひいて逃げようとする。  けれど夏目は、それ以上俺のモノに触れては来なかった。  ただ肌を撫でまわし、ときおり胸や腹に口づけられる。  彼に強く肌を吸われるたびに、俺は身体を震わせた。  もっと快感が欲しいと、俺は先走りに塗れたモノに手を伸ばす。  けれどその手は夏目によって止められてしまう。  だからと言って、拘束するわけでも、やめろというわけでもない。  ただ、ニコリと笑って、俺の手を止めるだけだった。  扱きたいのに、なんで止めるんだろう。  俺は涙目で首を振り、触りたいと訴えるが、夏目は許してくれなかった。 「なん、で……あぅ……」  乳首を舐められ吸われ、俺の腰がはねる。 「朱里、我慢できないの?」  つーっと太ももを撫でながら、夏目が言う。俺はこくこくと頷いて、夏目を見つめた。  相変わらず、彼は口元に笑みを浮かべている。 「お願い、だから……もう、無理……」 「何が無理なの」 「俺……もう、出したい……もっと、ほしい」  こんなじれったい愛撫ばかりでは、耐えられない。  触りたい。  もっと気持ちよくなりたい。  はやく熱を解放したい。  すっかり息を上げてしまった俺は、イクことばかりを考えるようになっていた。 「その前に、ここ、慣らさないと、ね」  そう言って、彼は俺の足を抱え上げると、尻を撫でまわした。  慣らすって何?  意味が分からず困惑していると、夏目はいつの間に用意したのか俺の腰の下にタオルを敷き、ボトルを手にしてそれのふたを開けた。  とろりとした液体が、彼の手に絡まる。  あれはローションだ。そう気が付いたとき、彼の指が、俺の尻に触れた。  窄みを指が撫で、ローションを塗りこまれていく。 「飛衣……慣らすって……」  この先何が起きるかなんてわかっているけれど、確認せずにはいられなかった。  指が窄みのしわを一本一本確かめるかのように、中央から外側へとなぞっていく。  ローションにまみれた後ろの穴にゆっくりと指が入って来たとき、俺は思わず尻に力を入れた。 「朱里」  中に入った指が一度引き抜かれ、夏目が優しく俺の名を呼ぶ。  彼は俺の足を抱えたまま俺に覆いかぶさると、唇を重ねてきた。  舌が唇を舐めて、離れてはまた唇が重なる。  ついばむようなキスと、唇を舐める舌に、俺の閉じていた唇が少しずつ開いていく。  それを見計らったように、夏目は俺の口の中に舌を差し込んだ。  歯列をぺろりと舐めては、舌は戻っていく。  俺はたまらず、自分から舌を差し出すと、夏目は俺の舌を絡め取りちゅうっと吸い上げる。  じわりじわりと、俺に夏目を受け入れさせようとしているのだろうか。  だからこんなじれったい愛撫ばかりを繰り返すのだろうか。  そう気が付いたときには、もう遅かった。  俺は多分、彼の望む言葉を口にしている。  お願い、と。  もっと、ほしいと。  このまま俺は、彼に囲い込まれてしまうのだろうか。  ベータである俺が、アルファである夏目に、抱かれる?  それでもいいか。  どうせ逃げられないのだ。  俺は自分から彼の首に手を回し、舌を出してもっと欲しいとキスをねだった。  

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