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捌
ゆっくりと、ワイシャツのボタンがはずされていく。
嫌だと首を振り、夏目の手首を掴むと、彼はすっと目を細めた。
「そんなに辛そうなのに?
ここ、がちがちじゃない」
言いながら、彼は俺の股間に触れる。
「ひっ……」
服の上からだって、人にそこを触られたことなど殆どない。
思わず声をあげて身をよじると、夏目はクスリと笑った。
「処女みたいな反応だね」
「何、言って……」
「痛くしないとは言わないよ。
君のここは、受け入れるためにできていないからね」
手がおりていき、尻を撫で上げる。
当たり前だ。
ベータである俺のそこは何かを突っ込むためにできてない。
オメガじゃないんだ。自分から濡れることもない。
「な……飛衣、なにするつもり……」
俺が問いかけると、彼は笑みを浮かべて露になった俺の胸を撫でた。
「君は寝ているだけでいいよ。
俺は好きにするから」
「好きにって……あ……」
乳首を指で撫でられ、思わず声を漏らす。
指先でクニクニと乳首をいじられて、感じたことのない痺れが這い上がってくる。
「ふ、あぁ……」
自分の声とは思えない、甘い声が漏れ出て俺は思わず口をふさいだ。
夏目が、俺の首筋に顔をうずめる。ねっとりと首筋を舐められ甘噛みされ、ちゅうっと音を立てて吸いついてくる。
角度を変えて首筋を舐められ吸われ、手では乳首を捏ね回される。
「ん……飛衣……」
「朱里、気持ちよさそうだね」
夏目の甘いテノールが、耳に絡みついてくる。
夏目が俺の身体を撫でるたびに、中心に熱がたまっていく。
このままでいいのだろうか?
このまま、彼に好きなようにさせて。
まだ俺は葛藤をしていた。
逃げられる状況ではないことはわかっているのだから、このまま身をゆだねた方が楽に決まっている。
けれど、俺は男だ。
男に抱かれるのなんて耐えられない。
だけど甘い香りは確実に俺の身体を蝕んでいる。
確実に俺は欲情し、この熱を解放したいと思っている。
「ここ、苦しそうだね」
「ひっ……」
夏目の手が、スラックスへと掛かる。
ベルトを外され、ファスナーを下ろされて、抵抗もできず俺は下着と共にスラックスを脱がされてしまった。
「な……飛衣……」
「先走りが溢れてる。
まだ、これ触ってもいないのに。
そんなに気持ちよかった? それとも、匂いのせい?」
言いながら、彼は俺のモノを指ではじいた。
思わず俺は腰をひいて逃げようとする。
けれど夏目は、それ以上俺のモノに触れては来なかった。
ただ肌を撫でまわし、ときおり胸や腹に口づけられる。
彼に強く肌を吸われるたびに、俺は身体を震わせた。
もっと快感が欲しいと、俺は先走りに塗れたモノに手を伸ばす。
けれどその手は夏目によって止められてしまう。
だからと言って、拘束するわけでも、やめろというわけでもない。
ただ、ニコリと笑って、俺の手を止めるだけだった。
扱きたいのに、なんで止めるんだろう。
俺は涙目で首を振り、触りたいと訴えるが、夏目は許してくれなかった。
「なん、で……あぅ……」
乳首を舐められ吸われ、俺の腰がはねる。
「朱里、我慢できないの?」
つーっと太ももを撫でながら、夏目が言う。俺はこくこくと頷いて、夏目を見つめた。
相変わらず、彼は口元に笑みを浮かべている。
「お願い、だから……もう、無理……」
「何が無理なの」
「俺……もう、出したい……もっと、ほしい」
こんなじれったい愛撫ばかりでは、耐えられない。
触りたい。
もっと気持ちよくなりたい。
はやく熱を解放したい。
すっかり息を上げてしまった俺は、イクことばかりを考えるようになっていた。
「その前に、ここ、慣らさないと、ね」
そう言って、彼は俺の足を抱え上げると、尻を撫でまわした。
慣らすって何?
意味が分からず困惑していると、夏目はいつの間に用意したのか俺の腰の下にタオルを敷き、ボトルを手にしてそれのふたを開けた。
とろりとした液体が、彼の手に絡まる。
あれはローションだ。そう気が付いたとき、彼の指が、俺の尻に触れた。
窄みを指が撫で、ローションを塗りこまれていく。
「飛衣……慣らすって……」
この先何が起きるかなんてわかっているけれど、確認せずにはいられなかった。
指が窄みのしわを一本一本確かめるかのように、中央から外側へとなぞっていく。
ローションにまみれた後ろの穴にゆっくりと指が入って来たとき、俺は思わず尻に力を入れた。
「朱里」
中に入った指が一度引き抜かれ、夏目が優しく俺の名を呼ぶ。
彼は俺の足を抱えたまま俺に覆いかぶさると、唇を重ねてきた。
舌が唇を舐めて、離れてはまた唇が重なる。
ついばむようなキスと、唇を舐める舌に、俺の閉じていた唇が少しずつ開いていく。
それを見計らったように、夏目は俺の口の中に舌を差し込んだ。
歯列をぺろりと舐めては、舌は戻っていく。
俺はたまらず、自分から舌を差し出すと、夏目は俺の舌を絡め取りちゅうっと吸い上げる。
じわりじわりと、俺に夏目を受け入れさせようとしているのだろうか。
だからこんなじれったい愛撫ばかりを繰り返すのだろうか。
そう気が付いたときには、もう遅かった。
俺は多分、彼の望む言葉を口にしている。
お願い、と。
もっと、ほしいと。
このまま俺は、彼に囲い込まれてしまうのだろうか。
ベータである俺が、アルファである夏目に、抱かれる?
それでもいいか。
どうせ逃げられないのだ。
俺は自分から彼の首に手を回し、舌を出してもっと欲しいとキスをねだった。
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