木乃葉に対する想いは依存(いそん)で、けっして愛ではなかった。 　それを知ったのは、朔夜の肉体が鬼に奪われ、霊体の身となった後のこと――。 　木乃葉に依存するあまり、この世を去るに去れなかった当初。朔夜の前に木乃葉の運命の伴侶が現れた。 　木乃葉の伴侶は、自分を犠牲にしてただ純粋に木乃葉の幸せを願っていた。そこで朔夜は気が付いたのだ。兄を想うそれは愛ではないのだということを――。 　もし仮に自分が木乃葉の伴侶だったとして、彼と同じことが出来るだろうか。 　答えは否だ。朔夜は木乃葉にすがり、自分可愛さ故に何がどうあっても救いを求めるだろう。 　だから朔夜は木乃葉に別れを告げ、この世を去った。ただただ兄の幸せを願いながら。そして朔夜もまた、幸福な人生を全うする為、輪廻を繰り返すことを決意した。 　そして二十七年を過ぎた現在――。朔夜はこの世を去った僅(わず)か二年の後に弓月として転生した。 　今の自分もやはり、陰陽師の家柄に生まれている。 　過去も現在も、自分の立場は変わらない。霊力も依然として強力なままだ。