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 ただ違うのは白家には嫡男の自分以外、子はおらず、ひとりきり。白家は父と母、自分と合わせて三人で、両親の祖父母は別の家で暮らしている。  弓月の父は白家を息子の弓月に後を任せ、当時は厳格だった父親は今ではすっかり羽目を外して夫婦そろって海外を飛び回り、のんびり暮らしている。今はこの広い白家に弓月のみの一人暮らしだ。 (まったく、同じ陰陽師でも過去と現在でこうも住む世界が違ってくるとは……)  ――薄い唇が弧を描く。  弓月が物思いにふけっていたその時だった。  微弱ではあるが、次元の(ひず)みのようなものが生じたのを感じ取った。  それとほんの微かだが、白檀(びゃくだん)の香り。  視線を月から庭に戻せば、低木で小さな白色の花を宿した冬を彩る馬酔木(あせび)の間を縫うようにして黒い人影が見えた。  そうかと思えば、『それ』は瞬く間に弓月の背後に移動した。

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