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◆へっぴり腰の泥棒。

 (二)  庭に降り立った真尋は所狭しと生えている植物の影に隠れながら周囲の様子を窺う。すると縁側にひとりの青年が座っているのが見えた。年は二十七歳ほどだろうか。  今の時勢には珍しく、涼しげな白の狩衣をふんわりと身に(まと)っている。彼は柱の一本に背を預け、座していた。  男の身長は座っているから良くはわからないが、百八十以上はあるだろう。座高が高い。  ほっそりとした体型で、襟足まで届くか届かないかくらいの少し長めの黒髪。高い鼻梁の下には、薄い唇が微かに笑みを浮かべている。一見すると女のように見えるが、肩幅が広い。彼が男だということはすぐにわかった。  闇の中にぽっかりと浮かぶ満月を見上げている二重の細い目はどこか悲しげで、その姿を見ていると胸が苦しくなる。真尋はその孤独な背中をそっと包んでやりたいと、なぜかそう思った。  しかしあの男と自分は赤の他人。面識さえもない相手だ。それなのにこの感情を抱くのはいったいどういうことなのか。真尋は少しばかり戸惑ってしまう。

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