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 ぐる、ぐる、ぐるる。  そんな中、今夜だけでいったい何度目になるだろう、真尋の腹が抗議する。空腹が戸惑いから解放してくれた。  少なくとも自分はまだこの屋敷に侵入したことを縁側にいるあの男には知られていない。奇襲をかけるなら今だ。  真尋は催促する腹を押さえ、おかしな気分をはね除けると胃袋を満たすための行動を決意する。  まずは敵の人数を知らなければならない。  そこで真尋は妖狐族から代々受け継がれている妖力を使って縁側に座している男の他に人間がいるのかを探ることにした。 「…………」  どうやらこの屋敷に住んでいるのはあの人間ひとりのようだ。この広い屋敷からはあの男以外、気配を感じられない。食欲を満たすには絶好の機会だ。  真尋はすかさず懐からナイフを取り出すと男が居る縁側へと走り込んだ。  いくら真尋が落ちこぼれであっても妖狐族が持つ俊敏な動きには変わりなく、並大抵の人間では敵うはずもない。だから当然、物憂げに月を見上げるあの男だって同じこと。真尋は恐ろしい速度をもって男の懐に入り込んだ。

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