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真尋は喉の奥から呻り声を漏らす。
男の首筋に突きつけた鋭利な切っ先が月光を浴び、妖しく光る。
真尋がとった行動により、一瞬にしてこの庭には緊張感が張り廻った。
静寂と薄闇が周囲を包むその中で、真尋のフー、フーと威嚇する荒々しい呼吸ばかりが耳に入る。
「物の怪 か?」
男の薄い唇が開いた。まるで夜気に溶け込むかのような澄んだ低い声が真尋の荒々しい呼吸と静寂さえもを突き破り、尋ねてくる。
つい先ほどまで満ちた月を見ていた憂いを帯びていたその目は閉ざされている。
けれども男の様子はけっして臆 しているふうではなく自然体に近い。彼のこれは真尋の正体を探っているように見える。
真尋は今ありったけの敵意を剥き出しにして威嚇し、男の首筋に鋭い切っ先を突きつけている。――にもかかわらず、緊張感というものがまるでないのはどういうわけだろうか。
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