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 真尋は、計画通りに物事が運んでいないことに苛立った。  そうこうしている間にも空腹のあまり意識は朦朧(もうろう)としてくる。飢え死にしそうだ。  そこで真尋は相手に敵意を見せるため、両端にある鋭い犬歯を剥き出しにして威嚇することにした。  これで少しは自分が今どれほど危機的状況に置かれているのかを理解することだろう。そうなれば男は易々と自分に食料を差し出し、そして自分は誰も傷つけることなく食事に有り付ける。そう確信していたものの――やはり事は真尋の思うようには運ばなかった。  ぐる、ぐる、ぐるる。  薄闇が広がる空間に何やら間の抜けた音が響く。  緊迫した雰囲気を必死に作ろうとしている真尋の行為をものの見事にぶち壊したのは他でもない。自分の腹だ。 「……っつ!」  これでは緊張感も何もあったものではない。  これだから自分は故郷の同族たちに馬鹿にされるのだ。  そして今に限っては目の前の人間からも馬鹿にされるに違いない。

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