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それにしてもこの男は不思議だ。霊力も見た目も人間のものなのに、どこか自分たち妖狐族と似ているように思える。
そう思うのは自分の空腹が極限までに達し、判断力が鈍ったからだろうか。
真尋は眉間に皺を寄せ、刃を突きつけている男についてあれこれ考えていると、男はふたたび口を開いた。
「それは無理というものだ。時間をいただかねば何も作れない。生憎、直ぐに食せるものはないんだ」
男は静かに首を振った。
「嘘だ! お前から甘い匂いがしたぞ。何か食いものを持っているだろうっ!!」
どんなに脅してもけっして怖じ気づかない。どこまでも冷静な男に、真尋は食ってかかった。
「甘い、匂い?」
「しらばっくれるな!! さっさと寄越せ!!」
怒鳴り散らす真尋に対して、やはり男は冷静だ。そして彼は真尋の言葉に反応した。何かを考えるように首を傾げた。
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