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すると間もなくしてひとりの年若い女が姿を現した。
女は年の頃なら十八歳ほど。面影にはまだ少女のあどけなさが残っている。腰まである艶やかな長い黒髪とは相対して陶器のような白い肌がとても印象的だ。異国の服だろうか、何十にも重なった薄手の衣をふんわりと身に纏い、縁側の前に立っていた。
そこで真尋がおかしいと思ったのは、屋敷にはこの男の他に人間の気配がしなかったということだ。
果たしてこの女、何者であろうか。
「戸棚の中に饅頭が入っていただろう? それを持ってきてくれ」
真尋が首をひねり考えている間にも、男は突如として姿を現した女に命じた。
「――はい」
鈴が鳴るような声音だ。女は主人が命じるままに軽く頭を下げると直ぐ、その場を去った。
そこで真尋はまたもや焦っていた。
もしかすると女は盗人が押し入ったと誰ぞ助けを呼びに行くつもりかもしれないのだ。
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