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――果たしてこの女、実は盲目なのであろうか。主人に突きつけられた刃が見えていないのかもしれない。
そう思うものの、軽々と歩いてのける女は盲目には見えない。家人が家人なら主人も主人だ。女と同様、まるで何事も無かったかのように真尋と接する。緊迫感のひとつもない。
「これで足りるか?」
真尋が男の首筋に突きつけているのは紛れもなく刃物である。しかし男は首筋にある鈍い光を放つ刃があたかも存在しないかのように腰を引くと器を拾い上げた。
へっぴり腰の泥棒・完
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