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「寄越せっ!!」
真尋は刃物を明後日の方向へ放り投げると、自分の立場も忘れて男から器を分捕り、饅頭を頬張った。
なにせ真尋は今日、腹ごしらえをしていない。人間にとってはたった一日食いっぱぐれただけではあるものの、妖狐族に換算すれば三日間何も口にしていないことになる。空腹に耐えきれなくなった真尋が夢中になって饅頭を頬張るのも無理はない。
しかし、これはあまりにも不用心だ。真尋の手から離れた刃物は男の喉元から消えている。男はそれを良いことに、軽々と腰を上げてしまった。
この屋敷の主人が自由になっていたと気付いた頃にはもう遅い。
「おい、何処 へ行く?」
真尋が放った刃物は庭先に転がっている。しかも警戒心を取り戻そうにも真尋は食事中だ。もぐもぐと口を動かしながら怒鳴っても緊迫感も何もない。
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