24 / 48

5

「――――」  さて、あの男は今度こそ誰ぞに助けを呼ぶつもりではないだろうか。  しかし、である。妖狐族という生き物は俊敏で、どのあやかしよりも抜きん出ている。誰が来ようと真尋の動きに勝てる者はまずいない。  そう思い直すと、真尋は女とふたりきりになった縁側でひたすら饅頭を頬張り続けた。  そうして真尋が最後のひとつになった饅頭を口に入れた時だった。 「あいにく一切れしか残っていなかったのだが……。ほら、お食べ」  先ほど出て行ったこの屋敷の主人と思しき男が戻ってきた。彼は大口を開けて饅頭を頬張る真尋の脇に平皿を置いた。  その器の中には――。  なんと驚くことに、一切れの鮭がぷつぷつと香ばしい音を立てて乗っているではないか。  差し出された鮭には思わず舌なめずりをしてしまう。差し出された鮭を素手で掴み取り、貪り食う。

ともだちにシェアしよう!