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◆名も知らぬ花。
(四)
ぐる、ぐる、ぐるる……。
腹の虫が鳴る。
真尋 が次に目覚めたのは、すっかり太陽が昇りきった午後のことだった。
「腹、減ったな~」
何か食べ物でも落ちていないかと、自慢の鼻を利かせて雑草ばかりが生い茂った地面を探る。けれども変化が苦手な真尋が人気のないこの場所を見つけたのだ。当然食べ物なぞ落ちているわけもない。
それでも何か食せるものが落ちていまいかと探っていると、毛を撫でる柔らかな風と共にほんの少し、甘い香りが漂ってきた。
真尋はふと視線を向けると、そこには真っ白な可憐な花が一面に咲いているではないか。
四つから五つある大きめの花弁はハートの形をしている。一見すると桜の花のようにも見えるが今の季節は冬だ。桜が咲くにはまだ早い。それに桜は木の枝枝から芽吹き、開花するのではなかっただろうか。
では、この花はいったい何なのか。
四季の花々に興味を抱いたことのない真尋が考えても判る筈もない。
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