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「――――」
……夜は冷える。けれど妖狐の里よりはずっとあたたかい。妖狐の里は人間が住む下界とをまるで結界を張るかのように、常に大雪が降っていた。
とはいえ、人間界も季節は冬だ。寒い。けれどもあの寒さとはまた違う、孤独という寒さが真尋を覆っていた。
真尋は孤独が嫌いだった。――いや、孤独を好む者なんてこの世に誰ひとりとしていないだろう。 真尋は人並み以上に嫌っていると言う方が正しいかもしれない。落ちこぼれの自分に友と呼べる者はいない。しかしたとえ仲間から爪弾きにされてたとしても健康な両親はいるし、何よりも最弱な自分を一番可愛がってくれた祖父がいた。
けれどもここには人間界。両親も祖父もいない。
頭上には永遠に伸びゆく藍色の空の中、満ちた月だけがぽっかりと浮かんでいる。
――この果てしない地にはただひとり。自分がいるだけ……。
真尋は孤独を思い知る。
三つの尻尾を持つ妖狐本来の姿に戻ると、三十センチほどの小さな身体を丸め、目を閉ざした。
泥棒のなれの果て。・完
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