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 いやいやそうではない。自分はただ祖父との約束を守りたかっただけだ。  真尋は花なんてどうでもいいのだと自分に言い聞かせ、自分の考えを否定した。 「今日も食っていくだろう?」  一人格闘している真尋に、男は訊ねるものの、しかし真尋の返事を待つことはなかった。  彼はどうやら真尋がここへ来た理由を知っていたようだ。男が訊ね終える頃には、金糸雀という名の女とはまた違う女が食い物の入った大皿を持ち、座敷にやって来た。  真尋の前に新たに姿を現した女の容姿もまた、金糸雀とよく似ている。細身の身体に何十にも重ねた異国の衣をまとい、腰まである艶やかな髪を後ろで束ねてある。  真尋がこの女と金糸雀が違う人物だと見分けが付いたのは、この女の方が背が低いからだ。 「昨日とは違ってたくさん用意しておいたから、構わずお食べ」  女の両手にある皿の中には男が言ったとおり、大きな鮭の切り身とおいなりさんがあった。  昨夜の件もあり、すっかり警戒心を解いている真尋は、目の前に用意された馳走に舌なめずりをして手を伸ばした。 名も知らぬ花・完

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