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「真尋。うん、いい名だね」
真尋。それは間違いなく自分の名である。それを明かす前に相手の口からすべり出たものだから、真尋は驚いた。
「んなっ! なんで知って?」
自分はいつの間に口を滑らせ、名を教えたのだろうか。
――いや、そのような暇はなかった、筈(はず)だ。それとも、豪華な馳走に目を奪われ、意識のないうちにぺらぺらと自ら名乗ってしまったのかもしれない。なにせ自分はとてつもない間抜けで、仲間からも爪弾きに合う妖狐の面汚 しなのだ。有り得ないことでもない。
「さて、どうしてかな?」
訊ねたのは真尋の方なのに、逆に訊ねられてしまった。
これではちっとも面白くない。
「むううう……」
真尋は頬を膨らませ、むくれた。
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