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第4話

海で泳いだ後、濡れた彼を思い出して、よろしくない妄想をした事はある。 伏し目がちな大きい瞳。 控えめな声。 震える体。 歩と名乗った彼は想像よりヤバかった。 「アッ!やだっ…… そんな奥まで……っあ!!」 羞恥に染まる頬。 快感に慣れていない体。 自分の息をゴクリと飲む。 こんな純情そうな子…… ほとんど相手にした事ない。 優しくキスして、不安げな表情の歩を抱きしめる。 「んぁッ!も……や、やめ……!」 「嘘つき。蕩けそうな顔しちゃって」 「あ!あ!っ……!」 奥まで攻めると歩は赤い顔して涙をこぼした。あまりに扇情的なその様子に加虐心を煽られる。 …………まいった。 可愛い………… あっという間に落ちてしまった歩を風呂に入れてから寝かせた。 腕を掴まれ、起きたのかと思い、顔を覗く。 「…………行かないで。瑛人。 別れたく……ない……」 歩の頬に涙が流れる。 それを見たら胸がチクチク…… ヤッた直後に、寝言で他の男の名前。 しかも泣きながら…… やっぱり、別れた恋人は男だった。 涙に濡れた頬を拭う。 「……瑛……人………」 歩が俺の手を握ってきた。 『瑛人』と間違えてんのかよ…… なんだか…… 胸が苦しい…… なんとなく眠れず、しばらく起きてたら、朝、寝過ごしてしまった。 …………やられた! ベットボード置かれたホテル代。 なかった事にするつもりか。 『来るもの拒まず、去るもの負わず』が俺のモットー。 だけど アイツを捕まえたい。

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