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第5話
会社の喫煙ルームでタバコを吸っている歩を見つける。
タバコ、似合わない……
「酷いじゃん。金だけ置いて連絡先も教えてくれず先に帰るとか。」
「な、なんで」
歩はあまりに驚いて固まってる。
「俺、隣の部署で働いてるんだ。
やっぱり気付いてなかったのか。
ま、俺も海で会った時はまさか会社の奴だとは思わなかったけど。」
「そんな」
「金曜の事、会社の奴にバレたらどうする?」
脅すつもりはないけど、また無視されたら困るし。
「何が望みだ?」
「セフレになって。
あゆ君、可愛かったし相性も良かったし。」
とりあえずはセフレで。
失恋であんなに落ち込んでるんだ。
真面目に迫ったら、こういう一途なタイプは多分、逃げる。
「好きな男がいたんだろ?
『別れたくない』って寝言で言ってたよ。
俺が慰めてあげる。ヤケで変な男、引っ掛けるより良いと思わない?」
『うん』って言えよ。歩。
少し位は俺の方を見ろ。
…………歩は何か言いかけて、シュンとしてる。
元彼の事、思い出してんのか?
なんだろ。
また、胃がムカムカ……
「…………分かった。」
諦めたみたいに歩が呟く。
提案に乗ってきたのは、多分、元彼を忘れたくて。
ヤケになってる歩に漬け込む。
でも、俺も自分の気持ちを知りたい…………
その日から、ほぼ毎日のように歩に連絡した。
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