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第16話
朝方、目を覚まし、ぐっすり眠る歩を引き寄せた。
…………隣に歩がいる。
情けないけどホッとしてしまった。
歩のやわらかい黒髪を撫でる。
何度か繰り返すと、歩が目を覚ました。
「葉月……」
歩が起き上がった。
「…………話が。」
覚悟を決めた顔……
…………答えをくれるのか。
ゴクリと息を飲み込む。
歩……
例え、お前がどんな答えを出したとしても。
俺は…………
「瑛人が来た日……
すぐお前を追いかけたんだよ……
でも、会えなかった。」
あの日はタクシーに乗っちゃったから……
すぐ……
本当に?
…………瑛人を置いて?
「電話は繋がらないしラインはブロックされてるし、会いに行っても会えなくて……」
お前を諦めらめるつもりだったから。
電話もラインもくれてたんだ……
会いたいと思ってくれてた…………?
歩の言葉に胸が熱くなる。
「お前が言ったんじゃん……
瑛人を忘れさせてくれるって。
俺の事、大事にする……って…………」
最後は声にならず、歩の頬に涙があふれた。
「…………お前に会いたかった。」
そんな風に思ってくれてたなんて……
「瑛人とヨリは戻さない。」
キッパリ歩が言う。
「あんなに辛くて苦しかったんだ。
アッサリ俺を切り捨てたのに……
やっぱり好きとか……
正直、もう瑛人が信じられなくて……
前に瑛人の新しい恋人とバッタリ会った事があったんだけど……
その時に俺の事、友達だって言ったんだ。
気まぐれで振ったり、元に戻ったり、俺には出来ないから…………
もう一回はとても考えられなかった。」
じゃ、まだ俺は諦めなくてもいいのか……
「お前が一緒にいてくれたから、落ち込む日も辛い日も、なんとか過ごせた。
お前といるとホッとして、楽しくて……
今更、突き放すなよ……ぐす……」
一途だった歩。
別れを受け入れるのも前に進むのも、きっと時間がかかるんだ。
でも、この涙は俺だけの為…………
「狡いって分かってる……
でも、葉月と一緒に……いたい…………」
下を向いて泣く歩の目元を拭う。
…………十分だよ。
何も言葉にならなくて、そっと歩を抱きしめた。
側にいるだけで満たされる気持ち。
抱き合うと胸に込み上げる。
愛しくて、ただ幸せだった。
後で俺もちゃんと伝えよう…………
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