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第29話
「…………告白してきた人は?」
歩が小さい声で言ってきた。
「付き合ってないよ。
お前を諦めるつもりで言っただけだ。」
「なんで……」
「瑛人と会ってただろ。
実家に行くって嘘ついて。だから……」
「ち、違……
瑛人が会社で待ち伏せしてたんだ。
実家には行ったよ!」
「2日連続で?何しに?」
「……本当はサプライズにしたかったのに。」
歩はそう言ってカバンから本を出した。
表紙はイチゴのホールケーキ。
…………お菓子の本?
「もうすぐ、葉月の誕生日だろ?
ケーキ手作りして告白するつもりだった。」
「手作り……」
告白…………?
「アップルパイ……何回か作ってくれただろ。
手作り……俺、嬉しかったから……
葉月が喜ぶと思って、実家の姉さん達に習いに行ってたんだ。」
「習い……」
「スポンジが難しくて、一昨日はちゃんと膨らまなかったから、昨日、また行ってきた。
……瑛人とはどこにも行ってないよ。」
…………じゃあ、俺の勘違い?
健気な歩に思わず、キュンとする。
「なんで、後ろ、柔らかかったの?」
「え?」
とりあえず、納得のいかなかった事を聞いてみる。
「3日空いてたのに、柔らかかったから、瑛人とヤッたのかと思って……」
「や、ヤッてない!」
「じゃ、どうして?」
「………………う。」
「変だろ。その柔らかさ。」
ブワッと歩の頬が真っ赤になる。
この態度……もしかして…………?
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