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【狐の嫁】香月美都(かづきみつ)

「ふ…ふぇっくしょん!」 はぁ…なんでこんな… 心の中でため息をつきながら、僕はうちの蔵で探し物をしている。何故ならば僕が所属する民族文化研究部が文化祭でこの辺りの郷土史をテーマにする事になって、図書館の資料では面白くない、と部長が言い出したからだ。 部長は幼馴染で、僕の家が神社である事も、古い奉納品が蔵に納められている事も知っている。 更に弱味を握られ、逆らえないと来た。 はぁ…。 あ。 蔵の隅に大きなつづらの様な箱があり、それと壁の間に巻物が入れてありそうな木の箱が見えた。 うん、こんな雑なしまい方してるなら、持ち出しても叱られないだろう。 蔵は2つあって、1つは貴重な品が入ってるからがっちり鍵がかけてあって、その鍵の場所は教えてもらえない。 こっちはほぼ物置だから鍵も申し訳程度だ。この巻物で部長が納得してくれると良いんだけどなぁ。 箱を持ち出し、庭で埃を払って蓋を開けると、ちゃんと古めかしい巻物が入っていた。もっともらしくお札が貼られているけど、ボロボロだ。 そっと箱から取り出して確認のために広げようとしたら、パリパリになったお札が粉々になってしまった。 やばっ…!! 慌てたせいで巻物を取り落とし、それは地面の上に広がった。 見た目の割に短くて1m程度の巻物で、始めの方に文章が書いてあり、人と戦う大きな狐が描いてある。 その後には退治された狐。 最後にまた文章があって、最後の部分に茶色いシミがあった。 血かな? ちょっと怖い。 怖いのについ、その茶色いシミに触れてしまった。 ー 礼を言う ー 誰かの声が聞こえた。 辺りを見回しても誰もいないのに、その声はまた聞こえて来た。 ー 封印を解いてくれたそなたの願い、我の力の及ぶ限りであれば叶えよう ー 「この辺の昔の事を教えて下さい!」 真面目か! と、自分にツッコミを入れたのは夜になって姿を現した狐耳の美形に「そなたは欲の無い人間だな。」と言われた時だった。 突然の事で頭が回らなかったんだよ!! 平安風(?)の服でベッドに座る狐耳の、綺麗だけど男らしい美形。違和感が元気に働いています。 「この我に昔話をねだる子供がおるとは…ふふふ…不思議な心持ちであるの。」 「いや、昔話じゃなくて、あー…、昔、この辺りであった事実が聞きたいです。」 「事実…なれど、封印されておる間の事は何も知らぬ。それより前で良いのか?」 「それはいつ頃ですか?」 「人の暦など知らぬ。」 「…もう結構ですのでおかえり下さい。」 「そうか。ではそなたの命を…」 「ちょっと待ったぁっ!!そんな約束してないぞ!」 「望みを叶えるに対価を持って約定を交わすは世の理。」 「いや、封印を解いた礼だろ!?」 「その礼ならば言うたであろう。」 言葉だけかよぉぉっ! 「ふざけるな!契約は無効だ!クーリングオフだ!!」 「空輪具王府…とな?我の知らぬ言葉だのう。」 「騙された人間を救うために作られたんだよ!」 「ほう。狐に誑かされる者がそれ程に多いのか?その狐に会うてみたい。会わせてくれたら空輪具王府とやらに従おう。」 できるかー! うぅっ…妖怪相手に法律なんて無意味だよなぁ。 「ちょっと待て。昔の話を聞けないならそっちも約束守ってないだろ。」 「そなたが不要と言うならば契約完了であろう。」 「完了してない。ちゃんと昔の話を僕の気が済むまで話して聞かせてくれ。そしてちゃんと事実であるかの確認が取れなきゃ完了しない。」 「うむ。では契約が終わるまで我の世話を許す。」 「なんで偉そうなんだよ!」 「偉そう…?はて?」 「あーっ!もういい。妖怪の世話なんて知るか!!」 とりあえずは時間が稼げる、と思う。そしてまた封印しよう。じーちゃんにお札作ってもらおう。 僕は夕飯前に怒られるの覚悟でじーちゃんの部屋に行った。 「じーちゃん、お願いがあるんだけど…」 「どうした?入って来なさい。」 「あの…物置の方の蔵で巻物を見つけて、開いてみたら狐耳の男が「なんだと!?」 「狐…「どこだ!?どこにいる!!」 見たこともないほど取り乱すじーちゃんに、僕は取り返しのつかない失敗をしたんだと気づいた。 「じーちゃん、狐は僕の部屋だよ。」 僕の首根っこ引っ掴んでドタバタと廊下を走る。部屋のドアを開けると、狐はベットの上で優雅に寛いでいた。 「騒がしいな。」 「この性悪ぎつね!一体、どうやって封印を破ったんだ!?」 「封印か。それはそこな稚児が解いてくれたのだ。」 「稚児…って、僕の事!?」 「斗真…どうやってあの蔵を開けたんだ。」 「え?だって物置の方の奥にあったよ?」 「そんなバカな!!」 今度は蔵へ走って行くじーちゃんを見送り、一方的に気まずい空気を感じながらじーちゃんが戻って来るのを待った。 「…っ斗真、こ…この中にあった巻物は…」 「あ、ここにあるよ。中の絵の事聞こうと思って。」 「それに封印するんだ!早く!!」 「…なんか、お札みたいなのがあったけどこなごなにくだけちゃった。」 「古の封印はすでに力を持たぬ。」 「いいからその巻物を開いてヤツに向けるんだ!」 「えっ?こ…こう?」 「無駄だ。我らはすでに契約を交わした。その者が契約完了を認めねば封印は無効だ。」 「と〜う〜ま〜っ!」 「ご、ごめんなさ〜い!!」 うちは神社の一角にあるので結界内になっており、狐は勝手に外へ出て行けないそうなのでひとまず放置して夕飯を食べてお風呂に入り、お説教タイムの始まりです。 「斗真…アレの封印を解いたのは恐らく、狐の罠にかかったんだろうからくどくどとは言わない。だが、きちんと私達の言う事を聞いていれば…」 くどくど言ってるなぁ。 真面目に聞こうと思っても耳を滑っていっちゃうんだよー。 「ねぇ、あの狐ってそんなに悪い狐なの?」 「…人の命を糧とする、と伝えられている。かつてこの辺りを治めていたまだ若い領主が取り憑かれ、日に日にやつれて命を落としかけたところをうちの先祖が狐を封印して救ったそうだ。」 確かに契約完了なら命をもらうって言われたなぁ。 「何の約束をしたんだ!?」 「この辺の昔の話を聞かせてくれって。」 でも年号も何も分からないんじゃぁ、役に立たないんだよ。文化祭で発表するのに郷土資料と比較しなきゃならないんだからさ。 「斗真、今から髪を切るな。伸ばせ。」 「なんで???」 「あの封印は特殊でな、解いた者の身体の一部が必要なんだ。だから髪を伸ばし、契約完了した瞬間に巻物に閉じ込めてそれで括れば封印は完成する。お札はただの注意書きだ。」 「えー?長髪なんて似合わな…」 「似合う似合わないじゃない!責任を取れと言ってるんだ!!それからその巻物は肌身離さず持っていなさい!」 「わっ、分かりました!!」 慌てて退散して部屋に戻ると、狐の雰囲気が少し変わっていた。 「斗真、と言ったか。我の世話をするために禊をして参ったとは良い心がけだ。さぁ、伽をせよ。」 「伽…?」 伽って、当然、お伽話…ではなく夜伽…って事!? 「何でだよ!男同士だろう!?」 「稚児はおのこぞ。愛らしきおのこの零す極上の甘露を味わえば、我はそなたらの言う悪さはせぬ。人を殺めたくなくば、我に従え。」 「殺めるって…」 「そなたが我に逆らえば、我は飢えてこの地を訪れる者を襲うやも知れぬ。ここの社に参った者をな。」 「それがイヤなら…身体を差し出せ、と…?」 「さよう。なに、陽気を貰い受けるだけで痛い事などせぬ。斗真はただ我に身を任せておれば良いのじゃ。」 いつの間にか抱き寄せられて膝に乗せられていた。 どうなってんの!? 身体から力が抜け、動く事ができないまま服を剥ぎ取られ、身体を(まさぐ)られる。そして耳をぺろりと舐められると初めての感覚に変な声が出た。 「ふゃん!あっ…や、だぁ…」 ぞくぞくとした感覚が耳から背中、腰を駆け抜ける。反対の首筋を撫でられるのも同じような感じがする。 「心地良かろう。」 「あん!これ…が…気持良い…って事?」 力が入らなくて不安な気持と、馴れない感覚が腰から下腹部へと伝わり、熱を集めて質量を増す中心に戸惑う。 「清らかな稚児が妖艶に花開くはこの世で最も心を揺さぶるものであるな。」 クスクスと愉しげに何だかよく分からない事を言っている狐に良いようにされているのに、嫌悪感も忌避感もない。男同士の行為なんて考えた事も無かったのに… 「あ…」 少し体温の低い狐の指が胸の飾りを撫で、何度か往復するとそこはぷくりと立ち上がり、指に優しく嬲られてますます下腹部に熱を送り込んだ。 「痛い事ないって…言ったのに…」 「…ふっ、これは我のせいではないだろう。そなたが昂ぶっておるだけじゃ。」 ガチガチに張りつめて痛いほどになった象徴。 「ちが…狐の…狐が…」 「なれば解き放ってやろう。」 「あぁっ!!」 熱くて柔らかい粘膜が敏感な部分に絡み付き、強めに吸われて一瞬で果てた。 「うむ。甘露である。」 こくりと喉を鳴らして僕のアレを飲み込んだ狐はとても満足げで。 舐め回された僕の身体は全く汚れていなくて。 裸のまま布団で包まれたらすぐに眠ってしまった。 人を殺める妖怪なのに、どうしてこの腕の中はこんなにも安心するんだろう? 朝になると狐の姿は消えていた。 「狐…?」 ー 何用か? ー うーん、やっぱり夢じゃなかったか。 「僕は学校へ行くから大人しくしててね。」 ー がっこう…何やら知らぬがそなたの行く所ならば我も行くぞ ー 「いや、大人しく待っててくれない?」 ー そなたの目が届かぬのなら… ー 「…来ていいから、僕がうっかり返事しちゃって変人扱いされないように、大人しくしててね。」 ー 良かろう ー 狐にとっては見るもの全てが珍しいんだろう。家も車も自転車もアスファルトも砂利道まで。約束通り僕には話しかけないけど、1人で驚きの声を上げている。 何だか少し某有名少年漫画みたいだ… 槍を持つ必要がなくて本当に良かった。 滞り無く授業も終わり、放課後になったので部室へ行く。 「お!斗真、なんか良いもんあったか!?」 「うーん…良いもの、かなぁ?」 幼馴染みで民族文化研究部部長のキヨが目を輝かせた。 巻物を見せて狐の話を聞かせると伝承が残ってないか調べよう!とノリノリだ。 まずは学校図書館へ。 って、いつ頃を調べたら良いんだろう? 「どっかに書いてないのか?」 「この辺とかこの辺とか字が書いてあるっぽいけど、汚れてて読めないんだよ。」 「家の人はなんて?」 「あ…ちょっと色々あって…聞けてない。」 「持ち出し禁止の巻物じゃないだろうな?せっかく調べて発表中止とかなったら嫌だぞ?」 とりあえずそれも含めて家で聞いて来ると言って今日の部活は終了した。 僕達以外は幽霊部員なので、がんばらないと廃部になってしまう。 …そうなったらなったで仕方ないと思うんだけど、キヨは守りたいらしい。 「じーちゃん、この狐の事教えて下さい。」 家に帰ってお守りを作っているじーちゃんに声をかけると、手を止めて真面目な顔で言った。 「知らん。」 「そんな事言わないで!」 「だが性悪狐が領主に取り憑いて殺そうとしていた事と、うちの先祖が封印した事はもう話しただろう。それ以外の事は封印を解くな、としか伝わっておらん。あとは狐じゃから誑かされるなよ、と言うくらいで…。」 「せめて時代は?」 「知らん。」 「じゃぁ、この巻物の事調べて郷土史と照らし合わせて文化祭で発表して良い?」 「どうせ物語程度にしか信じてもらえないが、良いのか?」 「それでも良いよ。」 何も分からない事にがっかりしながらも許可がもらえた事で良しとしよう。 ー 何故我に聞かぬ? ー 「だって人間の暦は分からないって…」 ー 近江で大きな地震があって京の都も大騒ぎだったぞ。その後流行病で大勢死んで、陰陽師がやれ厄よけだの何だのと騒がしかったな。ー 「近江で大地震?京の都!?」 ー うむ。その後の大きな地震で岩見の国が大波に飲まれたとかで我も疑われたが、我は人を誑かす事と失せ物探しくらいしかできぬ。見当違いも甚だしい。ー 「明日、町の図書館行くから、その事を書いた本探せるか?」 ー としょかん…? ー 「書庫、かな?」 ー おぉ、それならばできるぞ。ー 「やった!じゃぁ、明日、頼むな。」 ー うむ。では今宵も禊をして参れ。陽の気が我の糧、力を使うに必要じゃ。 ー 「またやんの!?毎日摂取する必要あるのか?」 ー 千年ぶりの食事じゃ。1度や2度では満たされぬ。ー そう言われると可哀想な気もするし、ちょっと恥ずかしいのを我慢したほうが効率がいい気がして来る。…誑かされてる? 夕食と風呂を終えて部屋に戻ると、狐はまた実体化して待っていた。 性悪狐と言われ、人の生気を食らう妖狐。 美形で、妖艶に微笑むと色気があって、昨日の気持良さを思い出して下腹部が少しばかり反応してしまう。 童貞が初めての口淫による快楽に溺れるなんて当然の成り行きで… ってダメだろ!! なんてぐだぐだ考えていたらいつの間にかベッドに全裸で寝かされ身体のあちこちを舐められて臨戦態勢になっていた。僕、ちょろ過ぎ!…で、なんで狐も脱いでるの? 「明日は妖力を使う故、丹田に直接、陽の気を取り込む。口から取り込むより効率が良いのだ。」 え?口からじゃない??? って、え??? それって、僕が狐に入れるって事? 雄々しく勃ちあがった狐の性器は大きくて長いから、僕が受け入れるのは無理だと思う。でも狐に…僕が…? 「男同士は、などと言うておったが我を見ても縮こまらぬとは良き心がけだ。」 だって狐は色っぽくて、無毛で肌はしっとりしていて、入れられるのは怖いけど入れるなら痛くないだろうし… 「狐…そこ、どんな感じなのか、触ってみて良い?」 「ふふふ、熱心だの。身体を縛る術を解いてやろう。」 やっぱり金縛りか何かをかけていたのか。 恐る恐る性器をなぞり、慎ましやかな蕾に触れると、何故かそこは熱く滑っていて僕の指をなんの抵抗もなく飲み込んで行く。とても柔らかい。 「ん、はぁ…」 本当に入るのかと指を出し入れしていたら狐が甘い吐息を吐いた。その反応に誘われて指を増やすと、大きな性器から雫がこぼれ、狐が腰を揺らし始めた。 「気持良い、の…?」 「ん…ふっ…ぅあっ…何しろ千年ぶりだからな。期待に昂って…あっ…」 なにかコリっとした場所を押したら狐の色香が増した。 「もっ、もう…入れ…入れて…くれ…!」 うつ伏せになってお尻を高く上げておねだりされるとか、未熟な僕の理性なんて消えてなくなるのが当たり前だろう。 狐の中をかき回した指で自分のを擦って滑りをまとわせ、僕を待ってくれている蜜壷にゆっくりと押し込んだ。そこは優しく、きつく締め付けて初めての僕は入れただけで果ててしまった。気まずい… どうしたら良いのか分からず、固まっていると狐が僕の双球に手を伸ばし、やわやわと揉み始めた。 「狐…ごめ…僕、早過ぎ…」 「糧だと言ったであろう。早いか遅いかなど何でもない。それよりまだ足りぬ。もっともっと、幾度でも注ぎ込んでくれ。」 きゅっきゅっと中を締められ、誘われると僕の物はすぐにまた硬くった。今度は狐のこりっとした所を狙って抽送したら驚くほど身をくねらせて狐が喘ぐ。2度出したら余裕が出て来て、狐の背中を舐めたり甘噛みしたりしながら胸をくりくり摘まむと、一際甘い声で啼いた狐が中をうねらせて強く締め付けて来たのでまた絶頂を迎えた。 今度は狐も同時にイったらしい。 さすがに3回も出したら疲れたので狐の背中に乗って寝落ちしてしまった。 そして微睡みの中で聞こえてきた言葉… — 早う、我に身も心も捧げて、死が訪れるその日まで共にあると誓え。ようやく立場などと言うものを気にする必要の無い身に生まれ変わったのだ。そして何度でも…我の元へ戻って来よ…我の魂の片割れよ。我の魂の片割れよ — 【感想はコチラまで→】香月美都(かづきみつ)@kadukimitsu

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