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【再封印されないように少年を篭絡します!】鳴神楓

五百夜(いおや)はとある山に数百年ほど前に住んでいた狐の妖怪である。 時々気まぐれに里に降りては、暇つぶしに人間を化かしたり惑わせたりといった悪さを繰り返していたので、ある時、強い法力を持つ山伏によって巻物の中に封印されてしまった。 五百夜を封印した巻物は漆塗りの箱に入れられ、お札で念入りに封印をされた上で、庄屋の家の蔵の奥深くにしまわれることとなった。 五百夜が巻物の外に出るためには、誰かがお札を剥がして箱を開け、巻物を開いて封印を解いてくれるのを待つしかない。 しかも封印を解いた人間は、たとえ法力がなくても巻物を使えばふたたび五百夜を封印できるので、五百夜が本当に自由になるためには、その人間が死ぬのを待たなければならない。 絶望的な状況だが、五百夜は諦めなかった。 巻物の中から時々外に意識を飛ばしてあたりの様子をうかがいながら、五百夜は封印が解かれるのをひたすら待った。 ──────────────── そうして、長い長い時が経ったある日のことだ。 五百夜が力を温存するために巻物の中でうとうとしていると、突然、自分の封印が解けていることに気がついた。 大喜びで巻物から出ると、大きな瞳が印象的な少年が驚いた顔で五百夜を見つめていた。 その顔を見た五百夜は、少年がこの家の次男坊だと気付く。 少年は五百夜が封印された巻物が預けられた庄屋の子孫にあたるはずだが、長い年月がたっているせいでこの家には五百夜のことは伝わっていないようだ。 巻物を読めば五百夜が封印された経緯もふたたび巻物に封印する方法も書かれているが、今の世の中では巻物に使われているくずし字を読めるのはごく一部の専門家だけらしいので、目の前の少年が読めるとは思えない。 勝った! これでもう俺は自由だ! 五百夜が心の中でそう叫んだ時、少年の唇が動いた。 「もしかして、君が五百夜(いおや)なの?」 そう言いながら少年の視線は巻物と五百夜を行ったり来たりしている。 つられて巻物に視線を落とすと、そこには確かに五百夜の名前が書かれていた。 ……くそっ、こいつ、巻物が読めるのか! 五百夜は自分の運の悪さを呪いたくなったが、よくよく見れば少年はまだ巻物を全部開いておらず、五百夜を封印する方法が書かれた部分はまだ読んでいないことに気付く。 なんとかこいつの気をそらして、巻物を最後まで読ませないようにしないと。 五百夜がそう考えていると、少年は少し不安そうな顔になってこう言った。 「あの……ごめん。  もしかして違った?」 どうやら少年は五百夜が黙っているので、機嫌を損ねたのかと不安になったようだ。 その様子を見て五百夜は、どうやらこの少年はどちらかと言えば自分に好意的らしいと気付く。 それだったら、いっそこいつを篭絡しちまえばいいんじゃないか? 体で落として俺に夢中にさせてしまえば、間違っても俺をもう一度封印しようなんて気は起きなくなるはずだ。 相手が好意的だからと言って、そこからすぐに体で篭絡しようという考えに至るあたり、五百夜は短絡的な思考の持ち主である。 だが、幸か不幸か、五百夜はその短絡的な思考を実現できるだけの力をもっていた。 「いや、合っているぞ。  確かに俺は五百夜だ。  それで、お前の名前は?」 とりあえず手始めに名前を聞いてみると、少年は素直に答えた。 「なぎさ……」 「なぎさか。良い名だな。  それで、俺の封印を解いてくれたのはなぎさなのか?」 「うん、たぶんそうだと思う。  僕が巻物を開いてしばらくしたら巻物から五百夜が出てきたから」 「そうか。  それならば、なぎさには礼をしなければいけないな」   そう言うと、五百夜はなぎさの頬に手を添え、なぎさに接吻した。 なぎさは突然のことに驚いたようで、目を見開いて呆然としている。 「封印を解いてくれた礼に、なぎさに天国を見せてやろう」 そう言いながら五百夜は、なぎさの目をしっかりと見据えて魅了の術を使った。 五百夜には封印を解いた相手を傷つけたり殺したりすることは出来ないが、この術ならばたぶん使えるはず──というか、使えなければ困る。 五百夜が外見は余裕たっぷりに、内心は術がかかるかどうかヒヤヒヤしながらなぎさを見つめていると、やがてなぎさの目つきがトロンとしてきて、力が抜けたように手に持っていた巻物を落とした。 よし、かかった! あとは体で落とすだけだし楽勝だ。 封印される前はしょっちゅうこんなふうに人間をたぶらかしていた五百夜には、とにかく抱いてしまえば相手を言いなりにできる自信があった。 なぎさが落とした巻物はさっさと燃やしてしまいたかったが、あいにく五百夜は巻物を傷つけることも触れることもできなかったので、とりあえずなぎさを抱き上げ、巻物から離れたところに移動することにする。 蔵の中はどこもかしこもほこりっぽかったので、五百夜は自分の衣を脱いで(しとね)代わりにし、その上になぎさを座らせた。 そのまま続けて服を脱がせても、なぎさはぼんやりしたままで、五百夜にされるがままだ。 お? これは当たりかもしれないな。 裸に剥いたなぎさの体を見て、五百夜は内心ほくそ笑む。 なぎさの体は若者らしくしなやかで程よく筋肉がついていて、実に五百夜好みの肉体であった。 五百夜がなぎさに触れると、なぎさは最初こそ反応が鈍かったものの、次第になぎさの愛撫に応えて可愛らしい喘ぎ声を上げるようになってきた。 おそらくは初めてなのだろうが、それでもなぎさは接吻しても、ささやかな乳首をいじっても、形のよい竿を握ってこすってやっても素直に受け入れて感じているので、五百夜も上機嫌になる。 初めてなら後孔はさすがに抵抗があるかと心配したが、魅了の術のおかげもあってか、なぎさはそちらへの愛撫にも素直に応えていた。 よし、この調子だったら、俺の自慢のモノを入れてやれば完全に落とせるな。 五百夜は自信満々で裸になると、自慢のモノをなぎさの後孔に押し当てた。 「ああぁっ……!」 五百夜がなぎさの中に入っていくと、なぎさは一際高い喘ぎ声を上げた。 なぎさの奥までたどり着いた五百夜が、そのまま続けてなぎさの中の悦いところをこすってやると、なぎさは絶え間なく可愛らしい声で啼き続ける。 ああ、これはたまんないな。 こいつ、初めてのくせして何ていい体してるんだ。 中が気持ち良すぎて、うっかりすると俺の方が持って行かれそうだ。 なぎさを啼かせつつも、実のところ五百夜の方もなぎさの体に溺れそうになっている。 封印されている間ずっとしていなくて久しぶりだからということもあるが、それにしてもなぎさの体は良すぎた。 最初のうちは自分の運の悪さを呪いたくなっていた五百夜だが、今は自分の運の良さに感謝したくなっている。 「……五百夜は、かわいいね」 「はあ?」 唐突にそう言われ、五百夜は驚いてなぎさを見る。 さっきまでとろんとした目つきで五百夜に抱かれて素直に喘いでいたなぎさは、今はどういうわけか五百夜のことを優しい目つきで眺めていた。 まずいっ、術のかかりが甘かったか? とにかく、ここまで来たら何とかごまかして、このままこいつを落とすしかない! 「な、なに馬鹿なこと言ってんだよ。  可愛いのはなぎさの方だろ?」 「ううん、五百夜だってかわいいよ。  ほら、いい子いい子」 そう言うとなぎさは、なにを思ったのか手を伸ばして五百夜の頭をよしよしと撫でてきた。 なぎさの突然の行動にも驚いたが、五百夜はそんなふうになぎさに撫でられて嬉しいと思ってしまった自分にも驚く。 「ああ、もう、そんなことよりも、もう少しで天国見せてやるからちょっと黙ってろって!」 「あっ…!」 五百夜が不可思議な自分の心の動きを無視して、ふたたびなぎさの中で動き出すと、なぎさもまた五百夜の動きに合わせて喘ぎ出した。 そうして五百夜はどうにかなぎさを射精まで導くことができ、そして自分もまたなぎさの中で達したのだった。 ──────────────── ……あー、もう、ぐだぐだじゃねーか……。 脱いだ衣を着ながら、五百夜は途方にくれていた。 なぎさはと言えば、五百夜の隣でやはり身支度を整えて服を着ている。 その様子は落ち着いていて目つきも普通で、魅了の術は完全に解けてしまったようだ。 まったく、こいつってなんか調子狂うな。 簡単に落とせると思ったけど、これじゃあ難しそうだ。 とりあえず今日のところはいったん離れて様子を見た方が良さそうだな。 と言っても、あの巻物からはあんまり離れられないから、こいつからも離れられないんだけど。 それでもとにかく自分もちょっと混乱しているので、こいつが目に入らないところで落ち着いて考えたいと五百夜は思う。 「五百夜……もう行っちゃうの?」 五百夜が蔵から出て行こうとすると、後ろからなぎさがそう声をかけてきた。 振り返ってみると、なぎさは少し寂しそうな顔をしていて、その顔を見た五百夜はなぜか胸が締め付けられるような気持ちになる。 「……ああ、もう行く。  礼はしたからな」 自分の心の動きは無視して五百夜がそう言うと、なぎさはいっそう寂しそうな顔になった。 そんな顔するなよ。 置いていけなくなるじゃないか。 そんなことを考えた自分に五百夜はまた驚いたが、それでも確かにそれは今の五百夜の嘘偽りない気持ちであった。 「また、会えるかな?」 不安そうにそう聞くなぎさに、五百夜は反射的にこう答える。 「ああ。  なぎさが俺に会いたいんだったら、また来てやるよ」 「本当⁉︎  じゃあ会いたいからまた来てよ。  約束だよ!」 「ああ、約束だ」 そう答えた自分に五百夜は驚き、なぎさが差し出した小指に自分の小指を絡め、うながされるまま素直に指切りをした自分にもまた驚く。 ……まあ、一応はこいつのことを落とせたみたいだし、これでよかったってことにするか。 どっちにしろ、こいつが俺を封印する気が起きないように時々は機嫌を取ってやらないといけないしな。 理屈に合わない自分の心の動きや行動の意味が、自分でもよくわからないまま、五百夜は何とか自分をそう納得させたのだった。 ──────────────── ◆side:なぎさ なぎさは蔵の中から去っていく五百夜の後ろ姿を見送った。 「かわいかったな……。  まさか巻物の中から、あんなかわいい狐が出てくるとは思わなかったよ」 ふさふさした尻尾の後ろ姿が完全に消えてから、なぎさはそうつぶやく。 蔵の中をあさろうと思いついた時には、まさかこんなお宝に出会えるとは思わなかったなと、なぎさは改めて五百夜が目の前に現れた時のことを思い出していた。 テレビのお宝番組に触発されて、学校から帰った後、自分の家にも何かないかと蔵の中をあさっていたなぎさは、蔵の奥の方で紙で念入りに封をされた漆塗りの箱を見つけた。 これはお宝の気配がするとワクワクしながら箱を開けてみると、中には古そうな巻物が入っていた。 「うう、達筆すぎて読めない……」 慎重に巻物を開いてみたが、中は昔ながらの続け字で書かれていて、ほとんど読めそうにない。 しかしなぎさはその中に一つだけ、カタカナでフリガナが振ってある漢字を見つけた。 「イホヤ……?  あ、五百夜(いおや)か」 古典の授業で昔の書き方だと「お」が「ほ」になると教わったし、たぶん八百屋(やおや)と同じように五百夜(いおや)と読むのだろう。 フリガナを振ってあるのはその一か所だけだし、しかも五百夜という言葉は巻物の中に何度も出てきているから、何か重要な言葉のような気がするが、他の字がほとんど読めないので、五百夜というのが何を意味しているのかわからない。 他にも何か読める字がないかとなぎさが巻物を見ていると、突然ボンッと音がして、なぎさの目の前に一人の男が現れた。 突然出現した男に、なぎさはぽかんと口を開けて見とれてしまう。 なぎさが男に見とれてしまったのは、男の顔がかっこよかったこともあるが、それ以上に男が三角の獣の耳とふさふさした尻尾を持っていたからだった。 ……かわいい! 男の姿を目にしたなぎさの第一印象はそれであった。 イケメンで身長も高いのに、ふさふさのかわいい狐耳狐尻尾とか、最高にギャップ萌えだ、となぎさは思う。 そう、実はなぎさはケモミミキャラが大好きだったのだ。 もともと動物全般が好きではあるのだが、人間の顔と体に獣の耳と尻尾という組み合わせは最高だとなぎさは思っている。 ケモミミならどんな動物の耳でも好きだし、かわいい女の子ケモミミもかっこいい男のケモミミもどっちも好きなので、イラストサイトでケモミミタグをあさったり、ケモミミキャラが出てくるマンガやアニメを見るのは至福の時間だ。 そんななぎさの目の前に、二次元にしか存在しないと思っていたケモミミキャラの実物が現れたのだ。 なぎさが興奮するのも仕方がないことだろう。 内心では興奮していたものの、なぎさは冷静さを失ってはいなかった。 狐耳の男が巻物から現れたことから、もしかしてこの巻物に書かれている五百夜というのは彼のことなのではないかと気付く。 彼の機嫌を損ねないように気を使いながら聞いてみると、彼はなぎさが予想した通り自分が五百夜だと名乗ってくれた。 その後、何がどうなったのかわからないが、気付いたらなぎさは裸に剥かれて五百夜に抱かれていた。 我に返った時には五百夜に貫かれていて心底驚いたが、それ以上になぎさが気になってしまったのは、なぎさと繋がっている五百夜のお尻で左右に振られているふさふさの尻尾だった。 狐も機嫌がいい時は犬みたいに尻尾を振るんだ。 っていうか、かわいすぎだよ! 自分を抱きながら嬉しそうにぶんぶんと尻尾を振っている五百夜がかわいすぎて、なぎさは思わず「かわいい」と口に出してしまった。 五百夜は照れているのか、ちょっと慌てた様子で否定していたが、頭を撫でてやったら尻尾の動きが激しくなっていたので、たぶん喜んでくれていたと思う。 結局、なぎさは五百夜に抱かれてイッてしまい、五百夜もまたなぎさの中でイッたのだが、男に抱かれてしまったのになぎさは全く嫌だとは思わなかった。 ケモミミは男女問わず等しく正義だし、それに五百夜は最高にかわいくて、なぎさはすでに五百夜のことが大好きになっていたので、五百夜に抱かれてむしろ嬉しかった。 あとは五百夜のセックスがすごくうまくて、なぎさは初めてだったけどむちゃくちゃ気持ち良かったからということもある。 セックスの後、五百夜はそのまま蔵を出て行こうとしていたので、また会えるかと聞いてみると、嬉しいことに五百夜は尻尾を振りながらまた会いに来ると約束してくれた。 結構僕になついてくれたみたいだな。 もうちょっと仲良くなれたら、そのうちにあの尻尾も触らせてくれるかな? なぎさは、五百夜のあのふさふさの尻尾を思い浮かべる。 五百夜の尻尾はふさふさで毛艶もよくて、すごく触ってみたかったけど、動物の尻尾は敏感でたいていの動物は尻尾を触ると嫌がるので、五百夜の機嫌を損ねるのが嫌で触らせて欲しいと言い出せなかったのだ。 実は頭を撫でる時に、どさくさにまぎれてちょっとだけ耳を触ったが、すごくいい手触りだったので、あの耳と尻尾を思いっきりモフることを想像すると自然と顔がにやけてきてしまう。 五百夜、早く会いに来てくれるといいな。 そう思いながら、なぎさは床に落ちていた巻物を片付け始めた。 【感想はコチラまで→】鳴神楓@narukami_kaede

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