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授業が終わり、俺は彼を引き留めた。
「お前、ダンスうまいな」
俺が彼に言った。
彼は少し驚いたような顔をしていたが、すぐに「ありがとうございます」といった。
「ダンス、誰かに教わったのか?」
「はい、ストリート仲間に」
ストリート仲間???
なんだそれは。
こいつ、アメリカ育ちか?
疑問は湧いたが、俺はあまり突っ込まずとりあえず返事をした。
「へぇー、そうか。あまりにうまいんで感心したぜ」
「そ、そうですか」
彼は照れたように頬を少し赤らめる。
可愛いな、恥ずかしがり屋なのだろうか。
「体育の授業であまり見かけなかったけど、休んでたのか?悪いが、名前教えてくれるか?」
「はい、結城空です。」
空か。なんかこの子にピッタリな名前だなと思った。
「結城ー、次の授業始まるよ!」
「あ、今行く!じゃあ先生、僕行きます。」
「おう、ありがとう」
結城は小走りで友人達のところへ行った。
あとで調べてみると、結城の家庭事情は随分複雑なようだった。
母親は離婚、父とは絶縁状態。
学費は親戚が賄っており、本人は独り暮らし。
それに最近は学校を休みがち。
だから俺の授業でも見かけなかったのか。
それに、あの憂いを帯びた表情。
俺は、結城の事が気になった。
何か悩んでいるのなら、力になりたいと思った。
でも、この時の俺はまだ知らなかった。
彼の抱える深い闇を。
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