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1日だけ休んでしまったけど、事情を知らないクラスメイト達はいつも通りに接してくれた。 僕にはそれがありがたかった。 特別な事が何もない、何の変哲もない日常に僕は安堵する。 それがよかった。 それだけでよかった。 放課後になったら教室で待っていてほしいと先生に言われていた。 一応、秘密の特訓という事らしいので、友人達には適当に理由を付けて、僕は一人、教室に残った。 ダンスを教えると言っても何から教えたらいいのかな。 そもそも僕もダンス歴が長い訳じゃないし、僕なんかが教えていいのだろうか。 でも、先生は「結城がいい」って言ってくれていた。 その一言が嬉しかったし、期待に応えたい。 なんか今日一日、そのことだけを考えて、ソワソワしてしまっていた。 その時、教室の扉がガラッと開いた。 「結城、お待たせ!」 先生がやって来た。 先生を見たら、胸の鼓動が早くなるのを感じた。 なんで? 緊張してるのかな? 「結城、近くの市民館の小さい体育館を予約したんだ。車で移動しようと思う。行けるか?」 「は、はい」 僕は、慌てて鞄を持って先生に駆け寄った。 でも、先生の前まで来たところで、緊張のせいか足がもつれてしまった。 「おっと」 倒れ込みそうになった僕を先生が支えてくれたのだが、結果、抱きつくような形になってしまった。 「ぅわ、ごめんなさい」 僕は慌てて体制を立て直した。 こんな昭和の恋愛ドラマにありそうな事をしてしまうなんて。 そういえば僕、この間、先生に裸を見られてるよな… 急にそんな事が頭をよぎって、慌てて首を振る。 なんでこのタイミングでそんなこと思い出すの! 自分の頭の中の記憶を司る海馬とやらに突っ込みをいれた。 「結城?大丈夫か?」 挙動不審な僕を見て心配だったのだと思う。 「だ、大丈夫っ!…です」 僕は慌てて答えた。 多分だけど、顔が真っ赤だったと思う。

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